人間には人間の歩んでゆく道が、本質的に与えられています。人間が、この道を歩みつつ、この道での完成をめざして進んでゆくことが善であり、これに反する行為が悪であると思うのであります。ではどうして人間の道を誤りなく歩むことができるでしょうか。それは、理性と本能とが調和し高まってゆくところにあると思います。理性と本能とが併行し、協調しつつ高まってゆくところに、人間としての正しい道があるのであって、これが善なる姿であり、この調和が破れた場合に悪になると思うのであります。

PHPのことば』(1953)