もともと、人間は自然の一部である。人間を含めて万物いっさいは、自然の理法といったものによってつくられたといえよう。そしてまた、その自然の理法によって、人間も万物もたえざる生成発展を続けているのである。美しい景観も、ゆたかな資源もすべてこの自然の理法の所産である。その自然の理法にかりに意志というものがあるとすれば、それを自然知と呼んでもいいと思う。その自然の知恵は、今日ある自然をさらによりよいものにしていこうと考え、そのように行なうであろう。といっても、それは自然みずからが行なうわけではない。だれかが、その自然知を受けて、これを代行するのでなければならない。それをやるのはほかでもない人間である。人間が自然知を受け、自然知にしたがって、自然を動かすというか自然に手を加え、よりよいものにしていく。それが人間に与えられた使命であり、人間だけがよくそうしたことを行ない得るのである。

新国土創成論』(1976)