本コラムでは今回から、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。

 

<真の経営者とは> 社長学の第一歩

経営のコツ

 “経営のコツここなりと、気づいた価値は百万両”とは、松下幸之助が、昭和九年の年頭に、松下電器の社員にお年玉として贈った言葉である。経営のコツを会得すれば、その価値ははかり知れないというのだ。

 およそ何事にも、上手に進め、成果をあげるには、勘どころ、コツといったものがある。いかに学問、知識にすぐれ、人格者であっても、経営に成功するとはかぎらない。そうしたことよりむしろ、“経営のコツ”をつかんでいるかどうかが成功の重要な要素になるのである。

 

 では、どうすればそのコツがつかめるのか。それは、人から教えてもらって“ああ、わかった”といった類のものではない。本を読んだり、あるいはセミナーに参加して、それでつかめるものでもない。経営者それぞれに性格も持ち味も違う。その会社のおかれている経営状況も異なる。だから、やり方を真似てもうまくいくわけがない。むしろ、やり方は違って当然、いや、違わなければならないといえよう。

 それだけに、コツを悟るのは容易なことではない。それは、何とかしてコツを悟りたいという強い願いをもって、日々実行と反省をくり返していくよりほかに妙案はないのかもしれない。大小さまざまな体験を一つひとつ重ね、反省をくり返す。そうした実践と思索を長年にわたって重ねるなかから、経営者に必要なさまざまな資質、能力が磨かれ、研ぎ澄まされて、経営のコツが身についていくのであろう。

 

生きがい、やりがいを感じる

 ただ、そうはいうものの、コツを悟りやすくするのに役立つと思われることがある。それは、経営者としての仕事を心から好きになり、それに生きがいを感じることである。

 経営者の立場、仕事というものは、決して楽なものではない。次々とさまざまな困難が生じ、それらに適宜適切に対処していかなければならない。大変といえば、これほど大変な仕事もまた少ないであろう。そこで大事なのが、その苦労の多い経営に生きがいを感じられるかどうかである。

 生きがい、やりがいは、何をするにもきわめて大切なことである。やりがい、面白みを感じられないことは、いくらやっても、なかなかうまくなるものではない。逆に、苦労を生きがいに感じられれば、苦しいなかにも、熱意と意欲が湧き、一所懸命な姿が生まれる。そこから成果もあがり、コツもつかめるということになりやすい。

 そういう意味で経営者には、決断力、先見性、指導力、カンのよさなど、さまざまな資質、能力が求められるが、まずは苦労多き経営に生きがいを見いだしうるかどうか、何よりも経営が好きかどうか、そこに社長学の第一歩があるといえそうである。

 

◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集

 

筆者

佐藤悌二郎(PHP研究所専務取締役)

 

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