本コラムでは、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。

 

<真の経営者とは> プロの自覚

半年先、1年先の売上げ見込みをピタリと当てる

 松下幸之助は、半年先、一年先の売上げの見込み額がつねにピタリと当たったという。銀行にお金を借りるときも、「半年先はこうなります、一年先はこうなります、だからこの分はまかなえますが、この分はこれだけ足りないので貸してほしい」と説明したとおりにいつもなったので、初めは半信半疑であった銀行も、やがて松下のいうことを全面的に信用するようになった。

 

 どうしてそのように見込みが当たるのかという社員の質問に、松下は、「そりゃあ、第一線で商売をやっていれば、半年先、一年先にどれくらいいくかピタッと当たるのが当たり前ではないか。そんなことがわからんようでは、ほんとうの商売なんかできない。木戸銭をとって綱渡りしているんだ、こっちは。それで落ちたりしたらどうにもならん」と答えている。
 この松下の言葉には、商売のプロとしての自覚と自負があふれている。

 

 あらためていうまでもなく、給料をもらっている以上、だれでもその仕事の立派なプロである。アマチュアではない。そうであるなら、やはりプロとしての強い自覚と実力が、すべての人に必要とされよう。

 

 そのなかでもとくに経営者・責任者の判断、決断は、組織の消長に大きな影響を及ぼす。その意味では、他のだれよりも、経営・商売のプロとしての自負と先を見通す力が求められている。「こういう事態は予想しなかった」「まさかこんなことになろうとは思わなかった」といった言い訳を口にするようでは、経営者失格をみずから公言しているようなものである。それでは到底、経営・商売のプロとはいえまい。

 

先を見通す力を養うには

 では、先を見通すプロの目はどうすれば養うことができるのか。

 

 昔の剣術の名人は、相手の動きをカンで察知し、切っ先三寸で身をかわすことができるようになるまで、それこそ血のにじむような修行を重ねたという。
 それと同じように、経営者・責任者も、やはり経験を積むなかで、厳しい自己鍛錬によって、先を見抜くカンや先見力といったものが養われていくのかもしれない。

 

 しかし、それにつけても、その出発点となるのは、まず“自分は経営・商売の専門家であり、プロである”という強い自覚をもつことである。そうした強い自覚と厳しい自己錬磨とが相まってはじめて、真のプロ経営者・責任者への道がひらかれるのではなかろうか。

 

◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集
 

筆者

佐藤悌二郎(PHP研究所専務取締役)
 

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