本コラムでは、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。

 

<真の経営者とは> 知恵を引き寄せる

ノウハウからノウフウの時代に

 今日のような変化の激しい時代には、過去の知識やノウハウはどんどん陳腐化してしまう。情報も、新聞や雑誌に出たときにはすでに古い、潜在している情報をいかにキャッチするかが大事だ、とまでいわれる。

 

 そのようなことから、今日は、ノウハウからノウフウの時代といわれ、いちばんの情報、最高の情報は人にあるということで、各種勉強会が盛んに開かれている。そこには、書物や雑誌からは得ることのできない知恵や情報を得るための、いわば情報ネットワークつくり、人脈つくりが期待されているのであろう。

 

 なかでも、異業種交流は、違った分野のいろいろな人と接するだけに、それまで思いも寄らなかった新しい世界がひらけたり、思わぬ発想やヒントが得られたりする。また、さまざまな業種の人々との人脈は、人間の幅を広げることにも大いに役に立つ。その意味で、社外の会合や勉強会に出席し、異なった業種や年代の人々と積極的に交流して意見を交換することは大いに好ましいことにちがいない。

 

 ただ、その場合に忘れてはならないことがある。それは、目的意識、熱心に求める心があってこそはじめてそれらが真に生きるということである。

 

大事なのは真剣に求める心

 陽明学者、安岡正篤は、「たとえば古本屋に立ち寄っても、平生勉強していなければ何も目につかないが、何か真剣になって勉強しているときには、何千冊並んでいても、それに関連のある書物は必ずパッと目にうつる」といい、「これを“縁尋”という」といっている。松下幸之助の言葉にも、「同じ話を聞いても、いい話だったと感動する人と、つまらない話だったと思う人がいる。ということは、話の善し悪しは、その内容よりも、むしろ聞く側の態度によって決まってくる、聞く側に大部分の責任があるともいえる。風の音にも悟る人がいるのだから」というものがある。

 

 これらはともに、大事なのは、みずからの真剣に求める心だということではないか。そういう心なしに勉強会に参加しても、これといった成果は得られない場合が多かろう。

 

 およそ何事も、事にあたって大事なのは、わが思いである。自分は何をどうしたいのか、という烈々たる思いがあってこそ、一言一句が心に響き、ヒントになる。つねに問題意識をもち、心のアンテナを伸ばしていれば、ふだんは見過ごし、聞き過ごしていることからも貴重な発見ができる。磁石が鉄を引きつけるように、熱意がさまざまな知恵を引き寄せるのである。

 

人脈つくりにしろ、情報収集にしろ、成功の秘訣はこのあたりにあるといえるのではなかろうか。


◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集

 

筆者

佐藤悌二郎(PHP研究所専務取締役)
 

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