社会的責任というものは、企業には本業がありましょう。その本業というものを全うすることが、社会的責任の第一ですわ。第二は、その本業を遂行するにあたって、いろいろ社会に対して影響があります。いい影響もあれば悪い影響もある。その悪い影響を及ぼさないというのが第二である。そういうように考えていいと思うんですね。

『松下幸之助発言集21』(経団連記者クラブでの記者会見・1975)

解説

 「本業」という言葉は案外理解の難しいものです。趣味がこうじて莫大な富を得ることがさほど珍しくはない時代に、なにが本業かと定義すること自体、意味がなくなってきているのかもしれません。

 個人の本業について、松下幸之助は別の著作でこう述べています。“趣味と本業とを、決して混同してはならない。本業はあくまで本業、趣味はあくまで趣味である。本業の余暇を利用して、趣味を味わい楽しみ、それが本業をする上にプラスになるとか、人間形成上プラスになるならば、それは趣味としてりっぱなものであろう。しかし、本業よりも趣味のほうが好きだという人は、むしろ趣味を本業としたほうがその人のためにもよいと思う”(『思うまま』より)。

 生きがい、やりがいをもって取り組み、喜びある生活を実現するのが、個人にとっての本業だと幸之助は考えていたのでしょう。それでは今回の言葉で幸之助がいう、企業の「本業」とはどう考えればいいのでしょうか。

 幸之助はこの発言のあとに、本業とは“社会に必要なものをつくる”ことだと述べます。松下電器相談役という立場での意見です。そして「社会的責任の第二」とは、企業活動に“派生するいろんな問題、失業者が出るとか、そういう問題をどう防ぐかということ”だとし、“いろんなことで思わない失策”があった場合、それに対し“全力を注いで償う、保障する”ことだと明言しています。あたりまえのことではありますが、事あるごとに思いおこすべきことではないでしょうか。

学び

自分の会社は、本業を全うしているか。

社会に不必要なものをつくっていないか。