Q20:幸之助は日本の伝統精神として大きく3つを挙げました。その2つ目の○○に当てはまるのは?

「○○を保つ」

 (1)名誉

 (2)主座

 (3)平静

矢印(下).png

解答&解説コラム

 (2)の「主座」が正解です。あまり聞き慣れないこの言葉を、幸之助は自著『日本と日本人について』のなかで、日本の伝統精神の2番目として挙げました。「主座を保つ」とは、幸之助いわく、「自分を失わないで、自主性、主体性をもって教えを受け入れ尊びつつ、これを生かしていく」ことです。


 ではなぜこの特性が日本の伝統精神なのか。同書で幸之助は明治維新期にいわれた和魂洋才という言葉をとり上げています。和魂を堅持しつつ、当時の先進国である欧米の知識・技術に進んで学び、日本の国民性にあわせて生かしたその姿に日本の伝統精神を見いだしたのです。また、仏教や茶道といった大陸から入ってきた文化を日本的なものにし、逆に日本の文化として世界に発信できるまでに発展させたことも、日本人が主座を保った一例だとしています。


 ところで当の幸之助は「主座を保つ」精神をどう発揮したのでしょうか。1952年、電機メーカーとして格上の存在だったオランダのフィリップス社との技術提携が、その代表的事例といえましょう。提携にあたり幸之助は、当初求められた高額なロイヤリティを安易に呑まず、前代未聞の切り返し策を提示します。提携により設立される合弁会社を成功に導くうえで欠かせない「経営力」に着眼し、国内に大きな販売・営業力をもつ松下電器の力に価値を認めさせる「経営指導料」を要求したのです。幸之助がみせた矜持が土台となって粘り強い交渉が続けられ、最終的にフィリップス側が譲歩して契約成立。松下電器は、以後の発展の核となる先進技術を素早く吸収・消化して自らの経営に生かし、急速かつ着実な成長を遂げることになりました。