Q30:幸之助が松下政経塾生に述べた言葉です。○○に当てはまるのは?

「人間として一番尊いものは○である」

 (1)徳

 (2)縁

 (3)夢

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解答&解説コラム

 (1)の「徳」が正解です。徳を備えた人についての幸之助の認識は、「思いやりにあふれ、謙虚で礼儀正しく、公平で正義感があり、知識も広い。そして何にもまして私心にとらわれずに何が正しいかを的確に判断できる」というものでした。その幸之助が「徳望の人」と心服していた一人が、元海軍大将の野村吉三郎氏(故人)でした。


 1954年、経営難にあった日本ビクターの再建を引き受けた幸之助は、なんと経営の素人である野村氏に社長就任を依願します。野村氏の周囲からは「海軍大将だった者が一民間会社の社長などになるのは傷がつくし、海軍の権威にもかかわる」と反対の声があがりました。しかし野村氏は、「前職にとらわれず、働きに働いて社会に貢献するのが国民として当然のつとめだ」と幸之助の要請を受け、見事、期待に応えてビクターの業績回復を成し遂げたのです。


 その野村氏ら思い出深い人たちとの出会いを回顧した書『折々の記』において、幸之助はこう述べています。「自分の利害とか感情とかいったいわゆる私心にとらわれてしまうと、判断を誤ることになりやすく、また力強い信念もわいてきません。そうした私心というものにとらわれずに、何が正しいかを考え、なすべきことをなしていく。そういうところに、正しい判断力や力強い信念、勇気が生まれてくるのではないかと思います。そういう意味において、ぼくはこれまで、野村さんには遠く及ばないまでも、常に私心なく何が正しいかということを考え、また自己の人格を磨き高めていきたいと願い、そのことを心がけてきたのです」。


 徳は、教えることも習うこともできない、自分で悟るしかない。松下政経塾の塾生たちにそう説いた幸之助でしたが、その人間として一番尊い徳を自らも悟り得るため、目標、理想を掲げて研鑽を積んでいたのでしょう。