Q9:この幸之助の言葉の○○に当てはまるのは?

「徹底した○○からかつてない革新が生まれる」

 (1)努力

 (2)工夫

 (3)反省

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解答&解説コラム

 (3)の「反省」が正解です。反省する――それは、人間に与えられた特権といっていいものでしょう。幸之助はその権利を最大限行使し、常に自らに生かそうとしました。上掲の言葉は松下電器(現パナソニック)の1971年経営方針発表会で発せられたものですが、著作でも講話でも、事あるごとにその必要性を説いています。ですから参席していた社員にとっては、聞き慣れた訓示であったように思われます。


 けれども当時の世相を知ると、この発言の“重さ”を感じることができます。それまでの急速な経済成長により、日本経済にはさまざまな問題が生じつつありました。家電業界も、消費者団体運動の高まりとともに生じた二重価格問題、海外でのダンピング問題など、かつてない危機に直面した時期だったのです。「世間は正しい」「社会の要望に応える」といった経営基本方針を貫き、大衆の支持を得て業績を伸展させてきた松下電器にとって、まさに辛酸をなめた時代だったといえましょう。


 こうしたとき、つい他に責任を求めたくなるのが人の常です。しかしその気持ちをおさえ、自社のどこかに反省すべき点がないかを考える。かつてない困難にあって、かつてない反省をする。そうしてこの苦境を乗り越えるところに、(それまでの松下電器がそうであったように)かつてない革新が生みだされると信じ、力強く行動することを、幸之助は当時の社員に要望したのです。