ある事業部の経営がなかなかうまくいかず、事業部長が交代して立て直しをはかることになった。新任の事業部長は幸之助に、「いろいろ実態を調べましたが、これは必ずよくなります。だから半年間は黙って見ていてください。必ずよくします」と挨拶した。幸之助は笑顔で、「そうか、半年どころか一年でもなんぼでも待つで」と答えた。
 安心して部屋を出ようとした事業部長のあとを、幸之助の言葉が追いかけてきた。

 「ああきみ、私は、一年でも二年でも待つけどね、世間が待ってくれるかどうか、それは私は知らんで」