松下幸之助用語

社員もお得意先

 

用語解説

 終戦直後、民主化の波とともに労働運動が盛り上がったころのこと、組合員が集団で廊下を踏み鳴らし気勢を上げるようなことが松下電器にもあった。そういう姿を見て松下幸之助は、「“人を使うは苦を使う”とはほんとうだな」と思ったというが、それと同時に一方では「なるほど、自分が人を使っていると思えば、これは苦労に違いない。けれども考えようによっては、この人たちは全部自分のお得意先ではないか。お得意先であれば、これは大事にしなければならない。だいたいお得意先というものはムリをいうものである。そのムリをムリと思わずに、“ありがとうございます”といって買っていただくところに商売の道がある」と考えた。そう思うと、人使いの苦労が薄らぎ、基本的には“使う”という気持ちはもたないほうがよい、ともに働くというか、さらに一歩進んで自分が使われているのだと徹すればよいとまで思うようになったという。まさに“人を使うは使わるる”という諺を実感したというわけだ。