経済成長に伴う物価上昇はやむなしとの見方があるが、本来、物価は文化の進展につれて下がっていくべきものである。なぜかというと、文化が進み新しい機械や生産工程の改善が次々に行なわれれば、生産性が向上して、コストが下がることになるからである。

 

物価は本来下がるもの

発表媒体

『週刊ダイヤモンド』1965年1月号 「私見」

 

内容抄録

 一説によれば、経済成長が続き、社会活動が活発になれば、物価がある程度上がるのは当然であり、それが経済原則だといわれている。たしかにそれも一理ある見方であろうが、物価本来の姿というものを考えてみるとき、私は必ずしも同意できない思いがする。むしろ、物価は本来、文化の進展につれて下がっていくべきものではないかと思う。例外はあろうが物価は本質的には、科学技術の進歩、経済の発展などの文化の進展とともに下がっていくのが原則だと思うのである。

 

 それはなぜかといえば、人知が進み、科学技術が進歩すれば、新しい機械も数多く発明され、生産工程の改善も次々に行なわれて、物資も大量に生産されるようになる。またお互いの間の連絡や、物の運搬が容易になるということにもなって、活動の能率が高まる。いわゆる生産性が向上することになって、物価は下がることになると思うからである。