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著作から見た松下幸之助の世界

折々の記

折々の記 折々の記  
昭和58年
『折々の記』
PHP研究所 刊
四六判(190mm×130mm)
208ページ
平成5年
『縁、この不思議なるもの』に改題
PHP研究所 刊
文庫判
200ページ
 

 

すべての人をわが師として、その教えを実践してきた松下幸之助が語る思い出の人。『PHP』誌に連載された12編に、 新たに8編を加えてまとめた書。

 

PHP Interface PHP研究所

【文庫版】目次

まえがき
社会人としての出発点〇五代音吉さんご夫妻 13
盲目の口入〇五代五兵衛さん21
いざというときの潔さ〇山本武信さん 28
仕事の喜びを味わう〇岡田悌蔵さんご夫妻 35
私の相談役〇加藤大観さん 47
“自分は社長!”の心意気〇坂口保雄さん 55
高潔な人格者〇野村吉三郎さん 63
国を思う情熱〇石田礼助さん 71
世界一のメガネ店〇金井武雄さん 79
剛腹の人〇石坂泰三さん 87
“業即信仰”の信念〇米倉 近さん 97
経営の師〇石田退三さん 105
熱心の権化〇江崎利一さん 113
利害を越えた判断〇久保田権四郎さん121
私心なき経営者魂〇太田垣士郎さん 129
目標を示した指導者〇池田勇人さん 139
経営を改革した倉庫係〇久原房之助さん 148
“ものみな寿命あり”〇立花大亀老師156
心の若さの体現者〇松永安左ヱ門さん164
孝行をしたいときには……〇両親の教え174
縁あることのありがたさ——あとがきにかえて

まえがき

 生まれつき、どちらかといえば病弱であったぼくは、両親や兄弟姉妹がみな比較的短命であったこともあって、若いころはそう長生きできるとは思っていませんでした。それが、今年で八十八歳、数え年でいえば九十歳を迎えることができ、しかも今日まで、ともかくも自分の仕事にそれなりの成果をあげつつ取り組んでこられたということは、まことにありがたいことだとつくづく思います。
 これもやはり、さまざまな面で多くの人びとに支えていただいたおかげ、さらには、ぼく自身にそのような運命を与えてくれた自然の理というか、人知を超えた大きな力のおかげだと思います。そうした長い間にいただいたたくさんの恩恵に対して、ぼくは心から感謝しているのですが、それだけにその一方では、せっかくいただいた恩恵に少しでも多くご恩返しができるよう、これからも健康に留意し、大いに志をもってがんばらなければ、と感じている昨今です。
 ところで、これまでにぼくが受けた恩恵のなかには、ある人に出会って、その人の言動から直接間接にいろいろと教えられたということが、いわば数限りなくあります。人生の折々に多くの人と出会い、さまざまな指導や助言、協力をいただいたことが、今日のぼくをあらしめている、という気がするのです。
 そうした出会いの数々は、今なお強い印象としてぼくの心のなかにありますが、それらの思い出のいくつかを、昨年、「折々の記」と題して、PHP誌に記しました。ぼくのささやかな体験から、とくに若い読者の人たちに、出会いの不思議さ、大切さといったものをいささかでも汲んでいただければと願ってのことでしたが、思いのほかのご好評をいただき、一冊の本にまとめたらどうかとのおすすめも少なからずいただきました。
 そこで、PHP誌に連載した十二篇に、新たに八人の方との出会いの思い出を加えてまとめたのが本書です。それでもまだ、数多く恵まれた出会いのなかのごく一部にすぎず、またその時々の状況を十分に表わし得ていないもどかしさを感じるものではありますが、ぼくにとってはいずれも、これまで生きてきたことの喜び、楽しさに通じる思い出です。まったく個人的な体験で恐縮ですが、みなさまがより充実した人生を生きるうえで何らかのご参考にしていただけるならばまことに幸いです。

  

昭和五十八年六月
松下幸之助

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