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人間を考える
【昭和47年版】目次
まえがき | ||
「新しい人間観の提唱」 | ||
序 章 | なぜ「新しい人間観」を提唱するのか | 15 |
第一章 | 宇宙というもの | 35 |
第二章 | 宇宙と人間との関係 | 45 |
第三章 | 人間の天命とそれを生かす道 | 63 |
第四章 | 長久なる人間の使命 | 83 |
補章一 | 人間の共同生活の意義 | 91 |
補章二 | 衆知による日本の歩み | 121 |
あとがき | ||
「人間を考える」を読んで | 145 |
まえがき
かえりみますと、私は満九歳の時からいわば実業一筋の歩みを続けてまいりました。その歩みのなかで、私は私なりにこれまでの人生を通じて、折にふれ事にあたって、人間というものについて、また社会というものについて考えてまいりました。とくに終戦直後の、あの混乱した悲惨な世の姿をまのあたりにみて、やむにやまれぬ思いから、昭和二十一年十一月三日にPHP研究所を創設、爾来二十五年、断続的ながら今日まで、さまざまなご高見を拝聴し、あるいは「PHP」誌を通じて多くの諸先生や読者の方がたのご意見もいただいてまいりました。そうしたなかから、知らず識らずのうちに一つのまとまったかたちになったものがこの「人間を考える——新しい人間観の提唱」です。そのような、いわば衆知の所産としての、人間についての一つの考え方をのべることも、それはそれなりの意義もあり、世の方がたがそのお立場お立場において、ここにのべるような事柄をご一考いただくならば、そこに何ほどかはお役に立つ点もあろうかと考え、ためらいつつも思案を重ねた末、あえてご高覧に供するしだいです。
むろん、ひとつの人間観をのべるということは、いわば百巻の書を尽くしても、論じきれないような大きな問題でもあります。それゆえ本書では、具体的な問題は今後に残し、新しい人間観のなかでも、もっとも基本的で、重要なことと思われる一端のみを述べております。そこに意を尽くし得ていない、あるいは推断にすぎるとのお叱りもあろうかと思いますが、どうぞそのようなことをお含みおきいただき、お目通しの上、是非いずれにしても、何らかのご高評を賜わりますならば望外の幸せです。
昭和四十七年八月
京都 東山 真々庵にて
松下幸之助