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松下政経塾 塾長問答集
目次
発刊にあたって | ||
その一 政経塾は今 —第四回入塾式訓話— | ||
人間の繁栄・平和・幸福を願って | 14 | |
自修自得が原則 | 16 | |
志があれば | 18 | |
政治家第一号誕生へ | 19 | |
実社会に役立つ人間に | 20 | |
その二 信用をつけてこそ | ||
塾長も塾生から学ぶ | 24 | |
自ら学ぶ中から信用を | 26 | |
塾長を越えて | 28 | |
なんとしてもこの塾をやりぬく | 30 | |
金のかかる政治が乱れのもと | 32 | |
鵜飼いのような税制 | 34 | |
政治の要諦と欲望 | 36 | |
人間の本質を知る | 38 | |
選挙演説では長所をほめる | 42 | |
麦飯のような話だが | 44 | |
その三 いっさいを生かす | ||
水を飲むのは君自身 | 48 | |
生産現場で学んだこと | 50 | |
機械化と人間 | 53 | |
リーダーの一言が | 55 | |
工場の人たちと | 57 | |
現場で思ったこと | 60 | |
不必要な仕事はない | 63 | |
生きがいを教える | 66 | |
ムシが好くように | 68 | |
単調な仕事はふえるが | 70 | |
知恵は無限 | 72 | |
大事にのぞんでは | 75 | |
成功するまでやめない | 78 | |
その四 意気に感ず | ||
塾長も一緒に勉強を | 84 | |
先人の犠牲の上に | 86 | |
原子力と交通事故 | 88 | |
ありがたみを知る | 93 | |
大学ふえて警官ふえる | 95 | |
国を救う気持ちで | 98 | |
アメリカの光と影 | 101 | |
甘やかしの日本の政治 | 104 | |
思いを持ってこそ | 107 | |
自己観照のすすめ | 109 | |
自分で自分を叱る | 112 | |
決めたら徹してやれ | 114 | |
日米貿易摩擦と労使関係 | 118 | |
終戦直後より困難な時代 | 121 | |
自力で中立を保つスイス | 123 | |
文民政治は日本本来の姿 | 126 | |
天皇制の不思議 | 128 | |
日本の伝統精神 | 130 | |
自分の立場に生きる | 132 | |
一将死して万卒を生かす | 135 | |
若い諸君たちに託したい | 137 | |
その五 人情の機微を知る | ||
人情の機微をつかむ | 142 | |
塾生の間は不偏不党 | 145 | |
後援者は自然にできてくる | 147 | |
働きがいのある時代 | 148 | |
不況は天然現象ではない | 154 | |
人生における賭け | 159 | |
高い理想も第一歩から | 163 | |
ほどほどが大事 | 165 | |
世界の中で日本を考える | 167 | |
「恩」を教える教育を | 169 | |
一世紀で理想的な政治に | 171 | |
意欲的に生きる | 172 | |
融通無碍の境地で | 174 | |
その六 危機を見抜く | ||
未曾有の世界的危機 | 178 | |
今、何をなすべきか | 180 | |
ただ本分を尽くすのみ | 182 | |
志を遂げる絶好の機会 | 184 | |
問題は山積している | 186 | |
その七 自らを見直す | ||
占いも虚心に聞けば | 190 | |
つとめを果たしているか | 193 | |
徹して突き進む | 196 | |
コツをつかむことが大切 | 198 | |
大名の坊っちゃんではダメ | 201 | |
便所掃除も進んでやる | 203 | |
睡眠三時間で血の小便が | 205 | |
九〇パーセントは運命だが | 208 | |
犬のシッポの振り方でも | 210 | |
知識よりも誠心誠意 | 213 | |
社会を料理する | 216 | |
強すぎる自我は一生の欠点 | 218 | |
教わらずして師を越える | 220 | |
その八 運命を信じて | ||
自分の運命を信じて | 224 | |
使命観を持てば | 226 | |
休日を返上したアメリカの社員 | 229 | |
死ぬほど迷う | 233 | |
一生は冒険 | 235 | |
その九 社会に学ぶ | ||
切迫感を持って | 240 | |
世間を知る | 243 | |
変化に順応する | 245 | |
最善を尽くしつつ夢を描く | 247 | |
世界の繁栄に貢献を | 250 | |
成功を信じて | 252 |
まえがき
発刊にあたって
早いもので、松下政経塾が開塾して四年目を迎えた。私自身このような事業の経験は持たず、また確たる成算があったわけでもなく、ただ、日本と世界の将来のために、今何かをしなければという、やむにやまれぬ思いから始めたものであった。それが、三年余りをへて、多くの方々のご協力をいただき、多少とも塾としての体裁が整ってきたというのが昨今の姿である。
現在、六十三名の塾生が在籍している。そのうち、一、二年生は塾を拠点として、共通したカリキュラムのもとに学習、体験を積んでいる。そして、その課程を終えた上級の三、四年生は塾外に出て、全国各地、さらには海外に場を求め、実践的な研修に取り組んでいる。中には、三年の研修課程を修了したところで、先の統一地方選挙にうって出て、県会議員に当選した第一期生もある。
そういう中で、塾長である私はというと、昔流の数え年で、ことし九十歳である。世間的に見れば、相当な高齢だし、肉体的には、足もともいささか覚つかないし、声も以前のようにスムーズに出なくなってきたというのが実際のところで、まあ頼りないといえば、はなはだ頼りない塾長である。しかし、この政経塾をなんとしても成功させたい、そして二十一世紀の日本をより好ましい姿にしていきたいという思い、情熱では、決して若い塾生たちにも負けないつもりである。また、そうした日本の姿をこの目で見とどけるために、それまで生きて、いわば長寿の記録をつくってみたいなどとも思っている。
そんなことで、月に一度は塾に来て、塾生諸君と懇談というか、問答をかわすことにしている。私のほうから一方的に何かを教えるというのでなく、塾生からいろいろ質問や意見をぶつけてもらって、それについて私の考えていること、体験してきたことなどを語るわけである。そうすることによって、塾生に何かをつかんでもらいたいのはもちろんだが、私のほうも大いに勉強させてもらっている。いわば、塾生、塾長共々に学ぶということである。
本書はそのような問答のいくつかを紹介したものである。特にテーマを定めているわけではないから、話題も多岐にわたって、必ずしもまとまったものではない。ただ私は、今の日本と世界が直面している情勢は、危機といってもいいようなきびしく、困難なものであり、それはこの三年余の間も、刻一刻と悪化していると感じている。私が塾生諸君に終始一貫訴えているのもそのことであり、本書をお読みいただいて、そうした思いをお汲み取りいただき、あわせて塾なり塾生のあり方について、ご叱正、ご教導をいただければまことに幸いである。
昭和五十八年六月
松下政経塾塾長 松下幸之助