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繁栄のための考え方
【文庫版】目次
文庫版発刊にあたって | |
まえがき(旧版) | |
人を動かす法 | 13 |
成功する人間関係/人を動かす術/じょうずな行き方/金はすべて国からのあずかりもの/破産よりもこわい脱税/納税者が得をする納め方/繁栄のための合理化 | |
万人が所を得る幸福 | 33 |
文化国家の三つの条件/一人一業主義が理想的/世は専門尊重時代/万人が所を得る幸福/信仰本能と宗教/三つの生徒守則に思う/世界共通の考え方 | |
人間の持ち味はみんな異なる | 58 |
大望よりも今日を生きる/生きがい、働きがい/人生はウデしだい/事業に踏み切った二つの動機/行水天国/その日その日の積み重ね/毎日をたいせつに/値打ちのある金、値打ちのない金/信用こそ資本/人間の持ち味はみんな異なる | |
今日は成功しやすい時代 | 82 |
たちまちひろがる宣伝広告/個性を生かせ/サラリーマンは独立経営者/仕事に打ち込む心/長所を見る秀吉、短所を見る光秀 | |
仕事に生命を賭ける気持 | 101 |
繁栄への責任を果たそう/悩みあってこそ人間味あり/赤字経営は国家の損失 | |
事業発展の原動力 | 108 |
見通しの立て方/専門家の意見を尊重する/心の持ち方/知恵のつく悩みは結構/中小企業の生きる道/人を集めるコツ/七〇パーセントの成功法/引き抜きはやらないほうがよい/会社にも人格がある/管理職は少数でよい/事業は任せることがたいせつ/長所もあれば短所もある/事業部制の二つのねらい | |
科学万能時代の人づくり | 135 |
明治維新の日本人/自主独立の精神/高野山に思うこと/知育・体育・徳育/弁慶の七つ道具/正しい人間をつくる教育/環境だけで人は育たない | |
繁栄への心がまえ | 154 |
自らの価値を知る/正しい評価力をもて/過当競争は避けるべきだ/自主性をもて/秩序あるデモ行進 | |
実力を生かす考え方 | 166 |
若い人の力を生かす/社長を動かす方法/実力をフルに発揮せよ/意見を売り込むコツ/抜擢人事が望ましい/人材活用法/責任者になりきる心/誠は人を動かす/魂のはいった経営/徹底した責任感/講義だけでは泳げない | |
偉大な富を生む民主主義 | 187 |
ケタ違いのアメリカの富/三百九十対一の実力差/民主主義は責任尊重 | |
成長する会社の条件 | 199 |
事業経営の第一条件/事業資金の本質/一歩一歩の成長 | |
適正経営という考え方 | 206 |
開放経済、順調に進展/“適正経営”をしているか/適正経営とは/多角経営より専門化/人事面も適正配置を/複雑な政治機構はいけない/借金は放漫経営のもと/適正経営には道義心が必要/遠慮しすぎるおとなたち/お互いの仕事に命を賭けよ | |
付・生徒守則 | 231 |
まえがき
文庫版発刊にあたって
本書は、もともと、昭和三十九年、実業之日本社から出版していただいたものである。
当時、日本の経済界は、高度成長をつづけ、大いに活況を呈していたが、反面、“所得倍増の二日酔い”ともいえるヒズミが、経営、経済の面のみならず社会の各面に生じていた。そうした中で私は、物心両面の真の繁栄を生み出すためには何が大切か、自分なりにいろいろ考えていたが、それらを出版社の求めに応じてまとめたのが本書である。
それから二十数年、わが国はまた一段と成長を遂げた。当時、日本の国家予算は三兆円で、アメリカの十分の一であったのが、現在では約五十兆円で、アメリカの四分の一強になっている。世界の総生産に占める日本の割合も、二パーセントから一〇パーセントに上がり、世界の国々から“経済大国”と呼ばれるまでになった。
しかし、今日、わが国は、海外諸国との摩擦、財政赤字、教育の荒廃等々、本書が発刊された頃と同様、いやそれ以上に深刻と考えられるさまざまな問題をかかえている。
これから二十一世紀にかけて、わが国は、そうした諸問題について、適切な解決の方向を見出し、新しい時代にふさわしい真の繁栄発展を実現していかなければならない。
これからの時代を担う若いみなさん方には、自他とものより一層の繁栄と幸福の実現のために、大いなる活躍をしてほしいと念じているが、その過程で本書が多少なりともお役に立つならばと願っている。
ご高覧いただき、ご意見ご感想等お聞かせいただければ幸いである。
昭和六十一年一月
松下幸之助
まえがき(旧版)
私はここ一、二年のうちに、すすめられるがまますでに二、三の著書を世に出した。幸いにいずれも思わぬご好評をいただいた様子であるけれども、私自身、もうこれ以上は、別に本職でもなし、本を世に出すという意志はすこしも持っていなかった。
その後、求められて時々話したりしたものが、かなりたまった。ところが、これをぜひ出版したいという熱心な申し出を実業之日本社から受けた。はたしていかがなものかと辞退したのであるが、たってのお申し出につい断わり切れず、同社にすべてをおまかせして、ここにこの本ができ上がった次第である。
ここには、私のささやかな体験にもとづく人生観もあれば事業観もあり、また若き人びとへの提言もあれば、開放経済を迎えての経営者の心がまえといった問題もある。すべて今日の世相に立って、繁栄を生み出すために日ごろ思うことが、多岐にわたってありのままに述べられている。
意をつくせぬ点も多いと思うが、今日の世に生きる人びとに、多少なりともお役にたつ点があるならば、本書もまたなんらかの意義を持つかもしれない。考え及ばぬ点、ご叱正を賜わらばまことにしあわせである。
昭和三十九年九月
京都・真々庵にて
松下幸之助