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著作から見た松下幸之助の世界

遺論・繁栄の哲学

松下幸之助 成功の金言365    
平成22年
PHP研究所 刊
A5判変型上製
409ページ
   

 

松下幸之助の数ある著作から集めた人生・仕事の金言365。毎日その日の言葉を読んでもよし、参考にしたい項から読んでもよしの書。

 

PHP Interface PHP研究所

目次

序にかえて
1月運命を生かす8
1日 成功/2日 自分の意志/3日 成功は運のせい/4日 運命に優遇される人/5日 夢 6日 死ぬに死ねない/7日 志を失わない/8日 大志と“足もと”/9日 徳/10日 心の改革/11日 仕事が好きである/12日 立ち上がる/13日 きょうの最善、あすの最善/14日 ほんとうの勉強/15日 全身全霊/16日 三年はかかる/17日 苦労/18日 積極的に受けとめる/19日 素直に承認する/20日 やりがい/21日 自分の力/22日 青春/23日  一瞬一刻、一木一草/24日 千載一遇の好機/25日 天寿/26日 機縁/27日 僥倖な人/28日 諦観と覚悟/29日 死ぬ瞬間までは、永遠に生きる/30日 きのうときょうは同じではない/31日 一人がめざめる

(以下、毎日のタイトルは略します)

2月自分をつかむ42
3月考える力を高める74
4月心を磨き上げる108
5月仕事に徹する140
6月経営意識を高める174
7月リーダーになる206
8月マネジメントを知る240
9月経営者になる274
10月世間を信じる306
11月人間を考える340
12月道を切りひらく372
[付録]10分でわかる松下幸之助の生涯405

序にかえて

「いま、哲学っておっしゃいましたか。哲学って、何ですか?」
 松下幸之助、五十一歳のときの言葉です。それは、弊PHP研究所を創設し、その考え方(物心両面の調和ある豊かさによって平和と幸福をもたらそう)を、戦後の人心・世相ともに荒廃した世の中に広めようと、ある会場で話をしていたときでした。聴講者からの「松下さんの言うPHPとは、哲学ですか」という質問に、即答できない、いや哲学という言葉の意味がわからず、返事のしようがなかったのです。
 ここで、松下幸之助らしさが出ます。その質問者に、逆に尋ねたのです。みずからの「哲学」のすえに、PHPを提唱したにもかかわらず、哲学という学問があることを知らなかった。しかし、とにかくわからないのだから尋ねようと、「哲学って、何ですか?」と聞いたわけです。
 その後、幸之助は『道をひらく』や『商売心得帖』といった本に代表される多くの著作物・発言を遺しましたが、五十歳に到達するまでにも、自社(松下電器産業、現パナソニック)の社員向けにはずいぶん多くの言葉を発してきました。そのどれもが考えに考えを重ねたすえのものであったことは、容易に読み取れます。「哲学」した上で、自分の言葉で表現をし続けた人生でした。生きる上で、仕事に取り組む上で、そして経営者として、さらには思想家として、粉骨砕身の人生を終えるまで、常に哲学をし、その上で実践してきた人間が、実は哲学という定義を五十歳になるまで知らなかった。しかし、だれよりも哲学することを自分の使命のように思い、その実践を前提に、独自のプラス思考力を高め、道を切りひらいていったのです。
 世間的には、功成り名遂げた男が、自分が知らないことを素直に「わからない」として聞く、そして耳を傾けるという人間的資質、人間としての姿勢自体にまず注目すべきなのかもしれません。が、それ以上に、このエピソードが物語っているのは、幸之助が「自分で考える」、そして「行動・実践する」ことを常に大切にして、実際に実行してきた人間であったということでしょう。
 「自分で考える」こと――このことを幸之助は、ある言葉にこめて、実に多くの著書で記し、また講演で述べています。
 それは、「自問自答」という言葉です。晩年は、それが昇華して「自己観照」という言葉もよく使うようになりましたが、一日の仕事、一月、一年の仕事をふり返り、「自分に問いかけ、自分で答える」ことを自身の習慣にし、まわりの人々にもその大切さを説き続けました。よほどその効果を実感していたからにちがいありません。

(中略)

 本書の編集にあたっては、幸之助が遺した書籍・発言の中で、現代のビジネスパーソンの生き方・働き方に資すると思われる内容を、五十冊を超える著書、『松下幸之助発言集』全四十五巻、月刊誌『PHP』を中心に選び、それらの中から文脈を損なわない程度に、極力幸之助の体験から発せられた言葉を抜粋いたしました。
 膨大な記述・記録のため、非常に至難な作業でしたが、三六五 + 一日というページに限りある中で、できるかぎり「今の時代」を意識して選り抜きました。
 そして読者を、一人の大志ある若き社会人としてイメージし、その一人の人間が、その人生を全うする上で、つまり一社員から経営者へ、そして人生の達人へと日に新たに成長していく過程をイメージしながら、その過程においてぜひ参考にしていただきたい言葉を、順次載せていくよう心がけました。
 また、読者の皆さんが一日を終えてみずからをふり返る際の指針になればと、幸之助が読者に「自問自答」してほしいと願ったであろうことを提起いたしました。巻末には、幸之助の簡略な生涯と、内容索引として本書で使用した書籍・雑誌等の紹介を附しています。
 さらには、本書のタイトルにある「成功の金言」として、本文中において特に読者の人生・仕事に何らかの気づきがあると思われる文節を強調しています。しかしもちろん、人それぞれ、読者の方それぞれに、みずからの心に響く言葉があるでしょう。ぜひその「金言」を探し当てていただければと思っています。日々の自問自答の中で、三六六個以上の金言が、読者の皆さんお一人おひとりの中に生まれ育っていくことを心から願っております。
 そして、そうした意味において、本書が多くの方々のよりよい人生の道標となるようでしたら、これに勝る喜びはありません。

  

二〇一〇年十一月二十七日
松下幸之助生誕の日に
PHP研究所 経営理念研究本部

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