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企業の社会的責任とは何か?
平成17年 PHP研究所 刊 B6変型版(180mm×120mm) 112ページ |
目次
まえがき | |
企業は社会の公器 | 9 |
企業の使命とは | 17 |
地域・環境との調和 | 29 |
公害の防除と絶滅 | 37 |
過密過疎と企業 | 47 |
自由な競争で共存共栄を | 57 |
国民外交の推進 | 69 |
社会人の育成 | 79 |
利益と社会的責任 | 89 |
経営者の責任、社員の責任 | 99 |
まえがき
昨今、企業の社会的責任ということが、さかんに論じられ、つよく問われるようになってきました。企業の社会的責任が好ましいかたちで果たされていくならば、どれほど大きな寄与を経済界に、また国民生活の上にもたらすかはかり知れないものがあります。ですから企業は、その社会的責任をよりよく果たしていかなくてはならないでしょう。ただ、そのためにも、真の企業の社会的責任とは何かということが正しく認識されなくてはならないと思います。
考えてみますと、社会的責任を負っているのはひとり企業だけではありません。お互いが相寄って社会をなし、共同生活を営んでいるのですから、この社会のすべての人が、それぞれの立場で社会的責任を持っていると考えられます。政治家といわず、経済人といわず、教育家といわず、文化人といわず、万人それぞれにそれぞれなりの社会的責任があるわけです。そういったそれぞれの人がそれぞれの社会的責任を適正に遂行していくところに、よりよい社会、好ましい共同生活が生まれてくるのだと思います。もしお互いに、他の社会的責任は問うけれども、自分についてはこれを軽視したり、おろそかにするといったことでは、この社会には無責任がはびこり、不信と争いの巷と化してしまうでしょう。
そういう意味から、いま日本人すべてがそれぞれに社会的責任を持っていることを、お互いがはっきり認識すべき時にきているのではないかという気がします。そういうことを自覚し、自分の社会的責任というものを自問自答することがきわめて大切になってきているのではないかと思います。
本書では企業の社会的責任というものを中心に考えておりますが、そのような意味において、本書が、企業というものについてお考えいただく上での一つの参考になり、またあわせて、それぞれのお立場での社会的責任についてもお考えいただく一助ともなれば望外の幸せです。
昭和四十九年九月
松下幸之助