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著作から見た松下幸之助の世界

政治を見直そう

   
昭和52年
PHP研究所 刊
B6変型判(180mm×120mm)
180ページ
   

 

政治の意味、民主主義の基本を問い、読者の意識変革を迫る。

 

PHP Interface PHP研究所

目次

まえがき
序 章混迷の日本
政治の混迷13
混迷の一原因17
政治にのぞむこと20
世界の繁栄の周期23
世界に提案できる政治を25
第一章国家経営なき日本
政治はあるけれど29
国家経営の理念34
あすの日本への大目標40
第二章国民意識なき国民
自分の国なのだから47
日本人であることは51
国民意識を高めよう54
第三章主権者はだれか
民主主義の政治は61
政治の最終責任は63
民主主義をこわす低投票率65
政治的良識を高めつつ68
第四章真の自由とは
恵まれている今の日本75
一人の自由も千人の自由も78
それぞれの良さを発揮して81
第五章守らない約束では
だれが法をつくったか87
権威を認めてこそ90
守ることのできる法律を93
第六章政治家を大切に
政治家の職責は重要99
まず議会のあり方から101
のぞましい国会議員とは103
政治家の優遇106
第七章政治の生産性向上を
政治の生産性113
日に新たな政治を118
政治に創意工夫を120
第八章日本式民主主義
日本にふさわしい政治129
伝統精神の上に民主主義を133
日本人としての主座136
第九章人間の本質に基づく政治
人間の幸せのための政治143
人間の本質は偉大なもの147
真の民主主義を150
政治を私していないか153
衆知を集め生かしつつ156
終 章世界の中の日本
まず独立自主の精神を163
国の総合力を高めて166
精神大国日本171
あとがき

まえがき

 改めていうまでもなく、政治はお互いの日々の生活、また社会のあらゆる面の活動がスムーズに進むかどうかを左右する、きわめて重要なものです。この政治のあり方いかんによって、お互い国民一人ひとりの幸せも決まってくるわけです。
 そういうことを考えると、この日本の政治をよりよいものに、真に好ましいものにしていくことは、いわば国民共通の最も大きな願いの一つといってもいいのではないかと思います。
 ところが、今日のわが国において、政治を本当によりよいものにしていくために、お互いは実際にどのようなことを考え、行なっているかというと、そこにはまだ十分力づよいものはみられないのではないでしょうか。もちろん、政治家の方がたをはじめいろいろな団体なり個人が、政治をよくするためにそれぞれなりに努力を払っておられると思います。けれども、広く国民全体からみれば、そういう姿はまだごく一部ではないでしょうか。ほとんどの国民が本当に日本の政治をよくしていこうと真剣に考え、それぞれの立場で実際に努力しているとは思われません。これでは、日本の政治は真にのぞましい姿をあらわしていくことはむつかしいでしょう。だから、お互い国民としては、もっと政治につよい関心をもって、よりよき政治を生み出すためにはどうしたらよいかをつねに考え、なすべきは着実に行なっていくことが肝要だと思います。
 とくに今日では20世紀も最後の四半世紀に入り、やがて21世紀の新しい時代を迎えます。21世紀の日本は、これまでのような姿のくり返しでなく、身も心も豊かな真にのぞましい日本にしなければなりません。そのために大切なことはたくさんあるでしょうが、中でも政治は最も重要なカギをにぎるものだと思います。したがって、真にのぞましい21世紀の日本を実現していくためには、まず何よりも今までの日本の政治を見直し、改めるべきは改めつつ、真にのぞましい政治を日本に生み出してゆかなければならないと思うのです。
 それでは、実際問題として、日本の政治を真にのぞましいものにしていくためには、いったいどのようなことを考え、行なわなければならないのでしょうか。これについては、見方、考え方はいろいろあるでしょうし、またその内容も非常に多岐にわたると思います。けれども、最小限、これだけは政治家もお互い国民も考え、行なうべきではないか、と思われることがいくつかあると思います。
 本書にとりあげた事柄は、そうした意味から、よりよい日本の政治、真にのぞましい日本の政治を生み出すためには、政治家もお互い国民も、せめてこういうことだけは実際に考え、行動にあらわす必要があるのではないか、というものです。
 もとより私は、政治に関しては素人であり、学問的、専門的なことは十分に知りません。ですから、本書で述べることの中には、あるいは的を射ていない、ことばの足らない点もあると思います。しかし、この国日本に真に好ましい政治が生まれてほしいという願いから、あえて日頃から考えていることの一端をここにまとめてみました。
 これらの中には、一面きわめて常識的なことも含まれていますが、こうした常識的なことが実際の姿、行動となっていったならば、日本の政治はお互いが願っているような真に好ましい姿を逐次あらわしてゆくのではないかと思います。
 そうした意味から、一人でも多くの方がたに本書をお読みいただき、その内容をそれぞれのお立場でご参考にしていただければ、まことに幸甚です。

  

昭和五十二年六月
松下幸之助

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