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素直な心になるために
目次
まえがき | ||
序 章 | 素直な心の意義について | 11 |
第一章 | 素直な心の内容十ヵ条 | 23 |
私心にとらわれない | 26 | |
耳を傾ける | 30 | |
寛容 | 34 | |
実相が見える | 38 | |
道理を知る | 42 | |
すべてに学ぶ心 | 46 | |
融通無碍 | 50 | |
平常心 | 54 | |
価値を知る | 58 | |
広い愛の心 | 61 | |
第二章 | 素直な心の効用十ヵ条 | 65 |
なすべきをなす | 68 | |
思い通りになる | 72 | |
こだわらない | 75 | |
日に新た | 79 | |
禍を転じて福となす | 82 | |
つつしむ | 86 | |
和やかな姿 | 90 | |
正邪の区別 | 94 | |
適材適所の実現 | 98 | |
病気が少なくなる | 103 | |
第三章 | 素直な心のない場合の弊害十ヵ条 | 107 |
衆知が集まらない | 110 | |
固定停滞 | 114 | |
目先の利害にとらわれる | 119 | |
感情にとらわれる | 123 | |
一面のみを見る | 127 | |
無理が生じやすい | 131 | |
治安の悪化 | 135 | |
意思疎通が不十分 | 139 | |
独善に陥りやすい | 143 | |
生産性が低下する | 147 | |
第四章 | 素直な心を養うための実践十ヵ条 | 151 |
つよく願う | 154 | |
自己観照 | 158 | |
日々の反省 | 162 | |
つねに唱えあう | 166 | |
自然と親しむ | 169 | |
先人に学ぶ | 173 | |
常識化する | 177 | |
忘れないための工夫 | 181 | |
体験発表 | 185 | |
グループとして | 189 | |
終 章 | 素直な心になることを願いつつ | 193 |
あとがき |
まえがき
「素直な心になりましょう。素直な心はあなたを強く正しく聡明にいたします」
このことばは、PHP研究所から出されている月刊誌『PHP』に毎号掲げられているものですが、実は私はかねてよりこの素直な心の大切さを感じ、折にふれてくり返し述べてきました。
なぜ私がそのように素直な心の大切さについて、くり返し述べてきているのかといいますと、私は素直な心というものこそ、お互い人間として最も好ましい生き方をもたらすものではないかと思うからです。つまり、お互い人間は、みなそれぞれに真の繁栄、平和、幸福、すなわち身も心も豊かに、仲良く幸せに暮らしたいと願っていると思います。いいかえれば、よりよき共同生活というものの実現を願いつつ生きているのではないかと思われます。ところが、現実にそういう姿がスムーズに実現されているかというと、必ずしもそうとはいえないように思われます。
その原因はいろいろあろうかと思いますが、基本的には結局、お互い人間の生き方自体に問題があるのではないでしょうか。つまり、みずからの願いというものを実現させるにふさわしい物の考え方なり心のもち方、さらには態度、行動をあらわしていない、いわば木に登って魚を求めるような姿を一面にくり返している。そういうところに、お互いの願いが必ずしも現実のものとなっていないことの一つの大きな原因がありはしないか、という気がするのです。
したがって、お互い人間がみずからの願いを実現するためには、それを実現するにふさわしい考え方、態度、行動をあらわしてゆくことが肝要だと思いますが、その根底をなすものが、この素直な心ではないかと思うのです。
すなわち、素直な心を根底にもってお互いが生きてゆくところから、人それぞれに願い求めている真のよりよき共同生活も逐次実現し、お互い一人ひとりの幸せもしだいに高められていくのではないかということです。
そこで、私はつね日頃から、くり返し素直な心について話し、その大切さについて述べているわけですが、ここでもう一度改めて、素直な心とは何か、またどうすれば素直な心になれるのかといったことについてみなさんとともに考えあってみたいと思い、本書をまとめてみたわけです。そうして、私自身もかねてよりこうした素直な心というものを養っていきたいと考えておりますので、今後は折にふれて本書をひもとき、素直な心になるための参考にしていきたいと考えております。
もちろん、本書を読めばそれですぐに素直な心になれるというものではないでしょう。が、それぞれがそれぞれなりに素直な心をつちかってゆく上においては、なんらかの参考になる点もあるのではないかと思われます。そういう意味から、本書が一人でも多くの方がたの素直な心になるためのご参考になればまことに幸せと存じます。
昭和五十一年八月
松下幸之助