「松下幸之助経営塾」は、経営者を対象にした松下幸之助の経営哲学を学ぶための公開セミナーです。今回は、同塾を受講されたタクミホーム株式会社・木村昌義社長へのインタビューをご紹介します。
松下幸之助経営塾 受講事例
Q:「松下幸之助経営塾」に入塾したきっかけを教えてください。
私は青森の地域企業の長男として生まれ、後継者となるべく育てられました。そういうこともあってか、私自身も小さい頃から「商売」や「経営者」に関心をもちはじめ、大学では経済学、経営学を学びました。そして私のなかで松下幸之助が経営者としてはいちばん成功した人物ではないかと考えるようになりました。
大学時代に門真にある松下電器(現パナソニック)の松下幸之助歴史館にも行きましたが、たいへん面白く3日間連続で通い続けました。今から思えばとても変な大学生だったと思います。当時、大学生の間ではディズニーランドが大流行していまして、ディズニーランドが好きで3日間通ったという話は聞いたことがあったけれど、松下電器の歴史館に大学生が3日間通ったというのは聞いたことがない(笑)。それほど刺激を受けました。ですから、PHPで「松下幸之助経営塾」を開講するという情報を入手したときには、直感的にどんなことがあっても行きたいと思いました。
受講したとき、既に私は松下幸之助さんの著書をほとんど読み、CDも聴いていました。また、松下幸之助歴史館だけでなく当時、京都府木津川市にあった松下資料館も見学しておりました。ですから松下幸之助さんについてはある程度の知識をもったうえでの受講でした。では、なぜ受講したのか。ひと言でいえば経営の神髄を学ぶためでした。
私は松下幸之助についての勉強以外にも、セミナーは数多く受講していましたし、グループ会社を含めてタクミホームの経営自体も順調でした。したがって普通に考えれば、松下幸之助が好きだからということ以外にあまりセミナーで学ぶ必要はない。しかし、私には100万円出してでも、どうしても学ぶ必要性があったのです。
というのは、これまで自分は一生懸命自分なりに勉強してきたけれど、それはあくまで勉強に過ぎなかった。いわば学問に近いものであった。経済学、経営学、松下幸之助学と、すべて何々「学」だった。私にとっては400年続いてきたこの企業をつぶさないことが何より大事なことでした。それは今も変わりません。企業はつぶれたらおしまいです。経営者である私がいちばん考えなければならないのはそこでした。そうならないためにはほんとうの経営がわからなければならない。いわゆる「経営学」でなく、「経営」がわからなければならない。社長になっていっそう真剣に経営について考えるようになりましたが、わかっているつもりでまだまだわかっていないという危機感があったのです。
Q:受講されていかがでしたでしょうか?
たいへんよかったです。私は経営者であると同時に商人なので投資対効果を必ず考えます。なかでも経営に対する投資対効果は極めて重要だと考えています。「松下幸之助経営塾」はその効果が非常に高かったといえると思います。
この「松下幸之助経営塾」の特徴でありよいところは、他のセミナーと違って教えてあげようとするのでなく、一生懸命気づかせようとしているところにあると感じました。
経営のコツはここだと、なかなか教えられるものではなく、気づくというか、経験して感じるものではないかということです。企業は業種や業態、歴史や文化、持ち味がすべて違いますから、経営のコツもみな異なると思います。もちろん大きな意味ではずしてはならない原理原則はありますが、経営者が「あ、わが社の経営のコツはここだったのか」と、気づくものだと思うのです。
そのためには経営者は素直でなければならないし、志が必要になってくる。そして、そこに使命感や理念が生まれてくるのではないでしょうか。そういう段階を経ながらわが社にあるべき経営を求め続けているうちに、ある日突然コツに気づくものだという気がします。
Q:講義についてはいかがでしたか?
A:
松下正幸塾長はじめ、特別講師の先生方にはすごく大きな刺激をいただきましたし、それを受けて受講生がさまざまに質問し、その後も受講生同士で議論できたところがよかったです。また、毎回出される課題の「松下幸之助の問いかけ」が、とても難しくて面白かったですね。特に、誰にでもわかるようなやさしい言葉で、ひと言で語れというのは、そのことについて腹に落ちていないとなかなかできない。どうしても決められた制限時間で話ができず、オーバーしてしまいました。(笑)
講義の内容ではありませんが、受講生の皆さんもすごかった。私は地元の集会ではそれなりに尊重していただいていますし、社内でも社員がある程度は遠慮してくれるので慣れていなかったこともあるのですが、講師でもないのにばんばん突っ込みは来るわ、前回の発言との矛盾を指摘されるわで、たじろぐことがしばしばありました。これは完全にカルチャーショックで、「松下幸之助経営塾」の受講生はいったいどうなっているのって思いました。ただ、こういった突っ込みは今のところ1期生だけのようですね。(笑)
Q:これから受講しようとお考えの方にアドバイスをお願いします。
A:
私は会期中に東日本大震災に見舞われ、何代もわが社にお勤めいただいている従業員のご家族をなくすという、身を切られるようなものすごくつらい思いをしました。また、究極の選択を迫られる場面に何度も遭遇しました。そのなかで松下幸之助さんの、企業の家族主義的な考え方は、決断をするうえでとても大きな心の拠り所となりました。先人の教えを身近で学ぶことができるということは、何物にも代えがたい素晴らしい価値があると思います。
「松下幸之助経営塾」の受講生は、ひと口に経営者といっても創業者はもちろん老舗の何代目という方や、二世、三世の方々、今は役員だけど次の社長になられる方など、バラエティに富んでいます。それぞれの立場があれば、それぞれの見方があり、それぞれの難しさがあります。しかし、何度も会って議論していると、自分の足りないところ、自分の持ち味、他人の長所短所も次第に見えてきます。そのなかで感じたのは、やはり、教えてもらおうという受け身の姿勢ではなく、少しでも吸収しようという姿勢、考えるスタンス、成長しようという意欲が大切だということです。
私は、受講期間の2カ月のインターバルの間に、最初の1カ月はノートやレジュメを何度も読んで講義をレポートにまとめました。そして次の1カ月でそれを読み返し、さらに他の受講生からのヒントも加えて、さまざまなコストダウンや人事戦略、販売戦略を実践してみました。このレポート方式は受講生がお金を無駄にしない、とてもよい方法ですし、受講生のためにもルール化してあげるべきだと思います。
教わったこと、感じたことを鵜呑みにするのではなく、自らの腹に一旦落とし、それから実行に移す。経営者にとって大切なことを学べるかどうかはまさに学ぶ者の姿勢次第です。しかしその学べる環境として「松下幸之助経営塾」は抜群であると感じました。意欲のある方は、ぜひご参加ください。一緒にOB会である同志会で学びあいましょう。
タクミホーム株式会社