今日の日本の姿を見ていると、政治でも何でも、やりにくいことを全部避けてしまう傾向が強い。やりやすいことしかやらない。財政危機といった問題も、そうしたところから生じてきているように思うのだが、経営でも、やりやすいことだけやっていたのでは、やがては行き詰まってしまう。

松下幸之助 経営語録』(1983)

解説

 「やりやすいことしかやらない」。政治家や官僚だけでなく、どの経営者も陥りやすい行動パターンといえるのではないでしょうか。

 将来性はあるが「やりにくい」事業への展開を避け、「やりやすい」事業に資本を投入し続ける。そしてその事業の競争優位が持続できなくなったとたん、経営危機に陥ってしまう。はたまた大胆な人材活用が必要とわかっていながら、実行できず、事業に勢いを生みだすことができない……。多くの企業がそうしたジレンマを抱えています。

 今回の言葉は、ある講演会で中小企業経営者からの質問を受けて、松下幸之助が“不適任者の処遇”について話したことの一節です。思い切って任命した責任者が職責を果たせない。その場合、異動させるのが経営者のやるべきことである。しかし(当時の)日本では、それは「やりにくいこと」。殺生やなあ、えらい厳しいなと思われてしまう……。それでも自らの経営を公のものと考えていたなら、やれるはずだ。個人の情としては忍びなくても、公のためには交替させないといけない、と幸之助は説いています。

 思えば幸之助は“無理をしない”経営を実践しましたが、それは“やるべきでないことをやらない”経営であって、「やりにくいこと」から逃げる経営ではなかったのです。

学び

やりやすいことしかやっていないのではないか。

やりにくいことであろうと、やるべきことをやらなければ。