私は世に行きづまるということはないというような感じがします。それでも行きづまるということは、行きづまるようなものの考え方をもっているからであって、行きづまらないような考え方に頭を変えたならば、そこから通ずる道というものは無限にあると、こういうような感じがいたします。

『松下幸之助発言集35』(松下電器主要協力工場懇談会・1965)

解説

 この言葉は、松下電器(当時)の下請けの仕事をして頂く会社・工場の責任者に向けて語ったものです。幸之助はいつも自分の体験からものを語るのですが、このときは松下が大手自動車メーカーに納めていたカーラジオの大幅な値下げ要求を受けたときのことを題材に、話を進めています。

 値下げ要求という、いわば下請け業にとって必ず直面する「困難」に際して、値下げ幅をクリアしたうえに性能・品質を上げ、利幅までアップさせた事例を紹介し、「困難」も考え方次第、取り組み方次第で「チャンス」に変わるということを熱心に伝えようとしています。

 そして困難が大きければ大きいほど、その困難を超えることで非常に大きな成果が生まれるということを、身をもって知っていた幸之助だからこそ、「世に行きづまることはない」とまで言うことができたのでしょう。

学び

世に行きづまることはない。そう自信を持って言えるようになるには、どれほどの経験が必要なのだろうか。どれほどの困難と向き合えばよいのだろうか――。