君、自己観照をやったことがあるか。いつも自分自身を、自分の中にあって観ているわけやろ。それを一ぺん、君自身が身体から外へ出ていって、そして出ていった君が、今、現に存在している君を観る。そうした自己観照をやってみることや。ぼくが観るよりも君自身が観ればいい。そして「欠点を知った。私はこういう人間や」と、君の口から言うてみる。「それじゃ帰ってその欠点を直せ」と(笑)。こういうことや。

リーダーになる人に知っておいてほしいこと』(1980) 

解説

 前回に続き「自己観照」の話です。これは松下政経塾の塾生に松下幸之助が語ったものですが、こうした実践的な方法を聞くにつけ、主観や客観とはなにかといった哲学者がするような学究的議論をせずとも、とにかく反省してみよう、毎日自省してみよう、という気がおこってくるのではないでしょうか。

 幸之助に学んだ、影響を受けたと発言する経営者のなかで、おそらく最も有名な京セラ名誉会長・稲盛和夫氏の言葉にも、こうあります。“忙しい毎日を送っている私たちは、つい自分を見失いがちである。そうならないためにも、意識して反省をする習慣をつけなければならない。反省ある人生を送ることにより自分の欠点を直すことができ、人格を高めることができる”(「KAZUO INAMORI Official site」より)

 反省が欠点を直す。人格を高める。2人の成功者が同じことをいっているのです。けれどもこれほど確かな人生の成功法則を、人間はなかなか実行したがらないものです。身につけた知識、経験やプライドが邪魔するのでしょうか。平凡なことだからと、ついつい等閑にしてしまうのでしょうか。それが人間といえばたしかにそうです。しかしながら、反省するというすばらしい能力を与えられているのも人間なのです。

 ちなみに今回の幸之助の言葉によって、反省の効果を高めるための、私たち凡人が実践できる簡単な方法を知ることができます。そうです。「口から言うてみる」です。心に言葉で言い聞かせる。毎晩寝る前に、一日をふり返り、自己を観照し、反省すべき点を挙げて、声に出して、自分に語りかける。いっさいお金のかからない最高の自己啓発方法といえるのではないでしょうか。 

学び

欠点を知り、欠点を自分に言う。

口に出して、自分に言い聞かせる。