トヨタ自動車の高級車レクサスの販売でこの10年間、最上位の業績をあげているレクサス星が丘。創業者の山口春三さん率いるキリックスグループ7社のうち、今年1月に三男の山口峰伺さん(「松下幸之助経営塾」塾生)が社長に就任したネッツトヨタ東名古屋が運営している。同グループは、日本のモータリゼーションの黎明期である1960年代から、自動車関連事業に新しい風を吹き込んできた。両氏への直接取材をもとにその強さの秘密を探る。

 

<使命に生きる>
「キング・オブ・レクサス」を生んだ顧客目線の徹底――part1

愛知県を拠点に、トヨタ車の新車販売、中古車の販売、自動車リース、自動車整備、板金塗装、各種保険代理業などを手がけるキリックスグループ。同グループ企業のネッツトヨタ東名古屋が運営するレクサス星が丘(名古屋市千種区)は「キング・オブ・レクサス」と呼ばれ、二〇〇五(平成十七)年のオープン以来、全国のレクサス販売店の中で常にトップクラスの業績を維持している。

 

部品会社で才能発揮し、独立

そんなレクサス星が丘ばかりがメディアの注目を集めているが、以前からネッツトヨタ東名古屋はサービスに定評があり、販売力の強い会社である。その礎を築いたのは、キリックスグループ社主の山口春三さんだ。
一九五七(昭和三十二)年に同志社大学を卒業後、愛知県刈谷市の愛知工業に入社した。現在のアイシン精機、トヨタ自動車グループの大手部品メーカーである。工務部企画課に配属された春三さんは、当初から管理能力に優れた社員だった。部品の仕入れや注文の仕方などに疑問を抱き、効率化を図る。


「ある部品は一度に一〇個ぐらいしか納入されないのに、別の部品は半年分もまとめて納入されたりしていました。倉庫内も整理されておらず、必要な部品をその都度探して回るような有り様でした。そもそも管理の視点に欠けていたのです。根本的な見直しに乗り出しました」


取引先の工場に対して、最初は一カ月に必要な量だけ納入してもらうようにした。その後、段階的にこの期間を縮め、一週間ごと、さらには一日単位で納入される仕組みをつくる。トヨタ自動車の生産方式で知られる「ジャスト・イン・タイム」の先駆けともいえよう。
倉庫内の部品管理の見直しにも着手。マトリックスをつくり、例えば「Aの5番の棚にはプラグ」といった具合に整理したところ、必要な部品がすぐに見つけられるようになる。


まだ若い春三さんのこうした働きを、豊田稔氏が高く評価した。稔氏は、豊田佐吉の弟である佐助の息子で、のちにアイシン精機の社長となる実力者だ。春三さんにとって励みとなった。

 

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「キング・オブ・レクサス」の風格が漂うレクサス星が丘の店内

 

春三さんの改革は社内にとどまらなかった。どの国内メーカーも、アフターサービスに力を入れていないことに目を向ける。当時は自動車の故障が多かった。修理代がかさむうえ、業務に支障をきたすことも。すでにドイツのフォルクスワーゲンなどは世界的なサービスのネットワークを築いており、日本のトヨタ自動車もこれに続かなければならないと思った。


そこで春三さんは稔氏に、「独立してアフターサービスの会社をつくりたい」と相談する。最初は相手にされなかったが、熱心に説明を続けたところ、「それならやってみなさい」と、ようやく認めてもらえたという。
とはいえ、開業に必要な資金等はすべて自分で用意しなければならない。自身の貯金に加えて、家族や友人たちから少しずつ借りることで三〇〇万円ほどの元手ができた。また、妻の実家の土地を工場の敷地に使わせてもらうことに。こうして一九六〇(昭和三十五)年、自動車整備会社の名豊トヨペットサービスを創業する。社員は七人。二十六歳の若さだった。

 

「最高のおもてなし」は“本物の心”から(2) へつづく

 

経営セミナー 松下幸之助経営塾
◆『衆知』2016.5-6より

 

衆知2016.5-6

 

DATA

キリックスグループ

[社主]山口春三(しゅんぞう)
従業員…約1,000名
資本金…4億5,000万円
グループ会社…キリックスリース(株)、(株)名豊トヨペットサービス、(株)名豊保険、名豊通商(株)、(株)名豊本社、ネッツトヨタ東名古屋(株)、(株)キリンダム

ネッツトヨタ東名古屋株式会社

[会長]山口茂樹
[社長]山口峰伺(みねし)
〒460-0006
名古屋市中区葵1丁目27番29号
TEL 052-935-6111(代表)
事業内容…トヨタ車・レクサス車・フォルクスワーゲン車の販売および整備、保険代理業