金というものは、五十円なら五十円の貨幣であれば、その中にあらゆる人の労役というものが入っていると思うんです。五十円というものは、人々の苦心の働きである。その働きを表現しているんだ。だから、そういう金の尊さというものを粗末にしてはいけない。あらゆる人の働きの一部分が五十円なのだから、そのつもりで大事に使わないといけない、というようなところから始まって、そして人間のいろいろの働きの尊さというものを考えねばいかん、というようなことが自分でもだんだん分かってきた。そこで社員にもそういう話をしてきたということですな。

『松下幸之助発言集16』(1979)