昔の日本には侠客(きょうかく)というのがいました。この侠客というものの特徴を分析して、いろんな点が十あるとすると、そのうち三つの点ぐらいについては、今日のわれわれの人生にとりいれてよいものがあるように思われます。

 たとえば侠客のあの度胸のよさというものは一面すばらしいものです。単なる無鉄砲では困りますが、必ずしもそうでなく、“千万人といえどもわれ往かん”という烈々たる度胸をもっていたのです。そしてそういう度胸、心意気が生まれるところに、いかなる難事をも打開してゆくたくましい力がわき出てくるのではないかと思うのです。

わが経営を語る』(1977)