一寸先は闇でありますから、志をもってやっているけれども、どういうことが起こってくるか分からない。その起こってきたときに、その志というものを常に堅く養っておけば、対処する道は自然に生まれるだろうと思います。これは私、非常に大事な問題ではないかと思うんですね。やはり日ごろの訓練と申しますか、心がけと申しますか、心がけの集積というものがなくてはいけない。
『松下幸之助発言集11』(全国杉の子連合会 杉の子全国大会・1965)
解説
この言葉は、勤労青年の育成を旨とする、ある社団法人の会合で語ったものです。このとき幸之助は、自分の時代とは違って、交通・流通の便は飛躍的に向上し、商品広告の面でもその効果の度合いは比にならない、さらには志次第で、必要な多額の資金を貸してくれるいい時代になった。だから、現代はまさに「成功しやすい時代だ」と、参加した青年たちに強く訴え、激励しています。
それから半世紀ほどが経った現在、「物」の面で飛躍的な発展を遂げたぶん、ビジネスの現場では、より高度な経営力や技能力が要求されるようになったわけです。こうした時代をどうとらえて生きていくか。困難で大変な時代ととらえるのか、はたまた、チャンスがいたるところにあって、成功しやすい時代ととらえるか――。それはやはり幸之助のように、後者の考え方をとるべきでしょう。
2011年3月11日、東日本大震災というまさに突然の大惨事から1年、復興への道はまだまだ程遠い状況です。国難ともいわれる今日、自らの復興に取り組む側、それを援助し支援していく側、いままさにすべての日本人に、幸之助の言う「心がけの集積」が試されているのではないでしょうか。
学び
普段の自分の「心がけの集積」は大丈夫だろうか。
いつ困難と遭遇しても対処できる十分な備えができているだろうか。