私の第一声としては、「人間把握ですよ」と。「お互いに把握し合うんですよ」と。そのことを申しあげたい。人間とはどんなものかを人間自身が知らなかったらいかん。人間が人間自身を「こういうもんだ」といって把握しないといけない。そこからいっさいが始まるわけです。

松下政経塾 塾長講話録』(1981)

解説

 今回の言葉にあるように、松下幸之助が松下政経塾の初代塾長として、塾生たちにその探求と実践を要望したのが「人間把握」でした。

 そして幸之助は続けてあと2つ、課題をだしています。“知識を使いこなす”と“物事を(覚えるのでなく)悟る”です。いずれも自らの経営人生のなかで大切にしてきた基本姿勢・心がまえといえるものでした。しかしその2つの実践のまえに、まず「人間把握」が出発点だと幸之助はいったのです。

 ちなみにこの発言の時点で、幸之助自身は自らの「人間把握」の研究の成果を、すでに世に問うていました。それが1972年に刊行された『人間を考える』という著書です。

 けれども人間とは、宇宙に存在する森羅万象と同じく、常に生成発展し、日に新たな進歩を続けるものだと幸之助は考えていましたから、その「把握」と探求に終わりはなかったことでしょう。つまり幸之助は、自身の終生の課題を塾生にも与えたのです。

学び

人間とは「こういうもんだ」。

それを自分の言葉で、いえるようになりたい。