流れのないところ水は腐ります。国家といえども、流れのないところ水は腐る。同じことであります。日に日に進化、進歩しなくてはならない。進歩のないところ渋滞します。渋滞するから問題が起こってくる。きわめて簡単なことであります。
『松下幸之助発言集11』(「日本を考える青年会議」での講演・1969)
解説
水が流れるように、人間も日々進化しなくてはならない。頭ではわかっていても、なかなかできることではありません。
松下幸之助は戦後、“PHPのことば”と名づけて、世の中を繁栄に導くための理念や方策を発表しました。そのなかで1948年4月、“素直な心”をとり上げています。そして素直な心とはどういうものかを解説するにあたって、水五題をあげました。水五訓ともいわれ、作者不明~戦国武将の黒田如水、はたまた中国の王陽明が考えたという説もある~の人生訓です。
その五訓にこうあります。“常に自ら進路を求めて止まざるは水なり。”“障害に逢い、激しくその勢力を百倍するは水なり。”その水が“素直な心”そのものであると幸之助は説いたのです。
つまりは、常に進化、進歩し、困難にかえってその力を増すことが、“素直な心”が発揮された姿だというのです。逆にいえば――幸之助が生涯求めたように――素直な心になることが、渋滞することなく、日々の進歩を生みだすための基になるということでしょう。
学び
いつも「水」のように流れているか。
腐った「水」になっていないか。