おたがいに神さまではないのだから、先の先まで見通して、すみからすみまで見きわめて、万が一にも誤りのない100パーセント正しい判断なんてまずできるものではない。できればそれに越したことはないけれど、100パーセントはのぞめない。それは神さまだけがなし得ること。おたがい人間としては、せいぜいが60パーセントというところ。60パーセントの見通しと確信ができたならば、その判断はおおむね妥当とみるべきであろう。そのあとは、勇気である。実行力である。
『道をひらく』(1968)
解説
今回の「人間は神さまではない」という言葉は、大きな成功をおさめ、“経営の神様”とまでいわれた松下幸之助が残したという点で、とても味わい深いものといえるのではないでしょうか。
人間は誰しも、成功したときほど「傲慢」になりがちです。自分がいつも「正しい」と思いたくなるものです。「いや、そんなことはない」と思っているのは自分だけで、いつのまにか「裸の王様」になってしまい、挙句の果てに、ほんとうの自分を見失ってしまう……。そんな人生の悲劇を招かないよう、この言葉を、日々自戒するための警句として活用したいものです。
幸之助は、心の持ち方として、素直であることと同時に、謙虚であること、そして常に感謝報恩の気持ちを忘れないことを大切にしました。人間が大好きで、人間を知ることへの探究心は限りないものでした。だからこそ、「自分」という人間を見失うことなく、人生を全うすることができたのでしょう。
いついかなるときも、100パーセント正しい判断ができたと思わない。自分の判断の正しさはせいぜい60パーセントくらい。あとの40パーセントは勇気と実行力で埋めるのだ。そうした考え方・心がけを持つことで、毎日の判断や行動に慎重さが生まれてくるでしょう。そして周囲の人に、常に感謝の気持ちを持って、素直で謙虚な姿勢で接することができるはずです。
学び
100パーセント正しい判断などできるはずがない。
「いける!」と思ったときに、まずやってみる。勇気を出してやってみる。