企業の一万人の人の中に海外に出ている人がある。その人が立派な日本人である、立派な社会人であるとなれば、ああ日本の人は立派なものやな、何々商店の人は立派やというだけでなくして、日本人は立派やな、日本の企業は立派やなとなって、国民外交というものが好ましいかたちにおいてそこに遂行されていく。これも企業の社会的責任やと思うんです。

『松下幸之助発言集4』(日本経営開発協会・関西経営管理協会での講話・1974)

解説

 今年(2013)1月に起きたアルジェリア人質事件に、強い憤りを感じなかった日本人はいないでしょう。どんな事情があれ、人道的に許すべからざる行為に、国家は断固とした態度をとるべきです。

 民族が違い、宗教、文化が違う国家では、複雑で理解しがたい困難が待ち受けている。そのことを前提として海外に進出することは、すでに多くの企業でとり組まれているはずです。ゆえにこれから重要になるのは、ますますグローバルに拡大する企業活動を、国家がどう守っていくかということであり、日本経済の復権を果たすべく始動した安倍政権が、その対策に抜かりがあってはなりません。

 そしてそうした官のバックアップのもとで、それぞれの国において「好ましいかたち」での「国民外交」を遂行する日本人、「立派な日本人」を、日本企業が世界に送り出していく。官民お互いが車の両輪のごとき役割を果たす必要性が急速に高まってきているといえます。

 それでも現実には、グローバル社会という未知の世界に恐れを抱く方もまだ多いことでしょう。しかしだからこそ、世界各国との共存共栄の実現に向けて、国民一人ひとりが貢献するチャンスが大きく拡がったのだ、まことにすばらしい時代になったのだ、と幸之助流のプラス思考でグローバル化を歓迎することが、これからの日本と日本人の選択すべき行き方になってくるのではないでしょうか。

学び

「国民外交」ができる人材になる。

「立派な日本人」になる。