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松下幸之助には、人間や宇宙の本質を追求するという哲人、思索者としての顔もありました。その主な考え方は、「新しい人間観の提唱」という力強い文章にまとめられています。以下がその冒頭部分です。
「宇宙に存在するすべてのものは、つねに生成し、たえず発展する。万物は日に新たであり、生成発展は自然の理法である。
人間には、この宇宙の動きに順応しつつ万物を支配する力が、その本性として与えられている。人間は、たえず生成発展する宇宙に君臨し、宇宙にひそむ偉大なる力を開発し、万物に与えられたるそれぞれの本質を見出しながら、これを生かし活用することによって、物心一如の真の繁栄を生み出すことができるのである。
かかる人間の特性は、自然の理法によって与えられた天命である。
この天命が与えられているために、人間は万物の王者となり、その支配者となる。すなわち人間は、この天命に基づいて善悪を判断し、是非を定め、いっさいのものの存在理由を明らかにする。そしてなにものもかかる人間の判定を否定することはできない」
つまり生成発展こそが宇宙の法則であり、人間はその宇宙の生成発展の営みの中に生まれ、存在しているというのです。そして万物の王者である人間には、物心一如の繁栄を生み出す力が与えられていると、松下幸之助は考えました。繁栄、平和、幸福を実現するためには、まず人間がその役割、天命を自覚認識し、自然の理法に従って万物・万人を生かさなければならないことを悟ったのです。
松下幸之助の「人間・宇宙観」については、この「新しい人間観の提唱」を収めた『人間を考える』および『松下幸之助発言集』第38巻に凝縮されています。同書にはそのほか「新しい人間道の提唱」も掲載されており、幸之助自身が考え抜いた人間のあり方を理解することができます。「松下人間論」の究極を知ることのできる一冊です。