有名な聖徳太子の十七条憲法の一節に“人皆党(たむら)あり”ということばがある。つまり、人が集まれば、そこにおのずからグループとか党派が生まれてくる、それが人間の一つの本性であり、自然の哲理だということであろう。だとすれば、そういう党派やグループを悪いものとして排斥するよりも、あるがままに素直にこれを承認して、全体のために活用してゆくことが大切なのではないか。
昨今、いろいろな団体で“派閥解消”が叫ばれているが、派閥は解消すべきものではなく、よりよき方向に生かしてゆくべきものだというのも一つの考え方だと思う。そして、その際必要なのが同じく太子の言われた“和を以て貴しとなす”の精神であろう。
『思うまま』(1971)