いちばん大切なことは、お互い人間それぞれにはもともと素直な心になる素地があるということを、はっきりと認識することだと思います。つまり特別の修行をした特別の人だけが素直な心になれるというのではなく、素直な心になることをつねに心がけ、自分なりに工夫をこらしていくならば、誰もが素直な心になれるということです。その意味では、素直な心はお互い人間としての自然の心、本然の心だと思うのです。
『人間としての成功』(1989)
解説
今回の言葉にあるように、松下幸之助は努力次第で「誰もが素直な心になれる」といいました。では、どんな工夫をこらしていけばいいのでしょうか。幸之助の著作に『素直な心になるために』があります。この本で示されている“素直な心を養うための実践十カ条”を以下にすべて挙げてみましょう。
“まず素直になりたいという強い願いをもち続けること”
“たえず自己観照を心がけ、自分自身を客観的に観察し、正すべきを正していくこと”
“毎日、自分の行ないを反省して、改めるべきは改めてゆくように心がけること”
“素直な心になるということを、日常たえず口に出して唱えあうようにしていくこと”
“心して自然と親しみ、大自然の素直な働きに学んでいくこと”
“先人の尊い教えにふれ、それに学び、帰依していくこと”
“素直な心を養うということ自体を、お互いの常識にすること”
“素直な心になることを忘れないための工夫をこらすこと”
“お互いそれぞれの素直な心の実践体験の内容を発表しあい、研究しあっていくこと”
“お互いに素直な心を養う仲間同士として協力しあっていくこと”
なかでも最初から3項目までは、幸之助自身が日々実践し、周りの人々にもよく説いていたことでした。「なれる」とまず信じて、できることからはじめてみてはいかがでしょうか。
学び
素直な心になれる。そう信じて、素直な心になりたいという強い願いをもち続ける。