松下幸之助が創設した松下政経塾ではどのような教育がなされているか――
塾生OBから初の総理大臣誕生(2011年11月時点)。野田首相の舵取りとともに、松下政経塾という存在も、マスコミや多くの国民から注目されていますが、「人育ての名人」でもある松下幸之助が、創設者として、政経塾に望んだ教育方針の大きな柱の一つに、「自修自得」がありました。政経塾では、実社会での体験研修、さらに各界に「師」を求め積極的に教えを請うていくことを重視するのですが、松下がそのことの意義を塾生に語るとき、「宮本武蔵」をよく引き合いに出していたようです。
そこで今回は、松下幸之助が政経塾塾生に期待した「人材像」についてその一端をご紹介、あわせて関連書籍をご案内します。
(2011.11.10更新)
政経塾の教育方針の一つ「自修自得」
塾生への講話テープ記録にはこうあります。
「宮本武蔵という人に師匠はいない。そうやけど、『剣聖』と言われるようになった。彼はどの先生についたわけでも、勉強したわけでもない。自分で編み出したんや。自分で剣の術を会得したわけや。だから、諸君も宮本武蔵の精神に倣って、自分で研究・工夫をしてね、政治であれば、宮本武蔵みたいな政治家になったらいいわけや」
しかしそれでも松下は、時間と体力の許すかぎり、松下政経塾塾長として塾生たちと語り合い、講話もし、塾生たちの「自修自得」を助成しました。さらに各界の有識者を招いて講義をして頂きました。その講義内容は、弊社において『松下政経塾講話録』(講師は牛尾治朗氏、中山素平氏ら)を皮切りにPART8まで刊行、好評を得ました。
そしてこのたび、松下幸之助が政経塾を創設した想いに大変共感を寄せておられる政治評論家の屋山太郎氏の特別講義をまとめ、『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』として刊行することになりましたので(2011年11月時点)、ここにご紹介します。
また今後も、松下政経塾の講義録本をシリーズとして発刊していく予定をしており、中西輝政氏(京都大学教授)などの日本を代表する有識者の方々にご登場いただく予定です。(2012年8月『日本人として知っておきたい外交の授業』が発刊されました)
屋山氏の講義風景
屋山氏は講義の目的について、同書で次のように述べています。
「いまわが国では、戦後教育を受けて『日本は戦争を起こした罪深い国だ』と学んで育った世代が、あろうことか日本の政治家になって政権に入っています。これは大変な時代です。私は長年、国内と海外で記者として働くうちに、つくづく日本という国のすごさと深さを知り、『過去を知らない政治家に未来は語れない』と思うようになりました。この講義は政治の授業ですが、それは永田町で日々、繰り広げられる政局を学ぶというより、もっと大切な国家観や『日本のために働くということ』を学ぶ時間にしたい。そんな思いで、これから話をしたいと思います」――こうした日本に対する誇りさらには危機感が、講義の至るところにちりばめられています。
松下幸之助は「今度生まれてきたら、また日本に生まれたい。そして日本の国をよくするために働けたら結構やな」という発言を残していますが、日本の政治に対して強い危機感を抱き、松下政経塾とPHP研究所という場を通じて、日本のために最期まで働き続けました。
その松下の、塾長時代の講話を収録した2点(文庫)、さらに政経塾の基本方針を示した「塾訓」・「五誓」を紹介している単行本『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』の計3点をあわせてご紹介いたしますので、ぜひご併読下さい。
PHP研究所経営理念研究本部+学芸出版部
参考図書