読売新聞に"経済談義"と題して、昭和48年6月から51年5月まで連載されたものをまとめた書。
まえがき
昭和四十八年の六月から、読売新聞に"経済談義"と題して、その時どきの所懐を書きつづってきた。当初は一年という予定であったものが、はからずも好評を得て、本年の五月まで丸三年間も続ける結果となった。その後、これを一冊にまとめてほしいとの要望もあって、改めて読み返し、その中から七十五編を選んで収録したものが本書である。
この経済談義が掲載された三年間というものは、日本経済が高度成長から、石油ショックによって一転し、インフレとそれに続く深刻な不況に陥るという激動の時期であった。さらに、そうした経済面のみならず、政治の面においてもいろいろ問題が多く、その政治の混迷がまた経済にも波及して混乱の度を一段と増すという、日本にとってかつてない非常時というか危機の時であったといえよう。
本書の一編一編はそうした危機の中で、私なりに考え感じたことをのべたものであり、経済談義のテーマのように企業経営なり、経済運営の問題を中心としつつも、それに重大なかかわりのある政治というか国家経営の面にも話が及んでいる。
その時どきに書きしるしたものであるから、今日からみていささか時宜にかなわないといった点もいろいろあろうかと思うが、この三年間の日本のあゆみをかえりみ、今後新たな光明の道を生み出していく上で、多少ともご参考になれば幸いである。
松下幸之助
目次
まえがき | |
金儲けと奉仕 | 12 |
二十二年前の決心 | 15 |
商売のコツ | 19 |
改革に成功した理由 | 22 |
不景気をなくす | 25 |
独占資本から大衆資本へ | 28 |
株式の大衆化を | 31 |
なぜ国鉄は | 34 |
私の国鉄改革案 | 37 |
労働は神聖なり | 40 |
大石内蔵助は | 43 |
無形の契約 | 46 |
派閥解消 | 49 |
商道徳について | 52 |
企業の社会的責任 | 55 |
続・企業の社会的責任 | 58 |
利益と税金 | 61 |
文部大臣の任期 | 64 |
借金の秘訣 | 67 |
重役に会わなかった話 | 70 |
企業の役割 | 73 |
ダム経営のすすめ | 76 |
諸悪の根源は... | 79 |
過疎地の工場 | 82 |
二つの政府 | 85 |
初任給と経営理念 | 88 |
日本と中国 | 91 |
先憂後楽 | 94 |
九十二歳の経営者 | 97 |
社会的責任 | 100 |
神に祈る | 103 |
オランダの水利大臣 | 106 |
国家意識 | 109 |
三十二歳の社長さん | 112 |
グァム島へ社員旅行 | 115 |
フグの毒でも | 118 |
坂本竜馬と経営 | 121 |
発想の転換 | 124 |
感心する | 127 |
経営者と整形手術 | 130 |
真剣勝負 | 133 |
経営が好きか | 136 |
病院は満員 | 139 |
新入社員 | 142 |
続・新入社員 | 145 |
英国鉄鋼公社 | 148 |
経営がない | 151 |
生産と消費 | 154 |
渡航資格試験 | 157 |
衆知が集まる | 160 |
心のつながり | 163 |
やりなおし | 166 |
平和の価値 | 169 |
わがこととして | 172 |
お得意先の電気係 | 175 |
適正経営 | 178 |
指導者と年齢 | 181 |
会社のよさ | 184 |
自分に弁解する | 187 |
情けのかけすぎ | 190 |
小僧の改革 | 193 |
心の体験 | 196 |
立場の交換 | 199 |
アメリカの大学 | 202 |
まず与えよう | 205 |
紙一枚の差 | 208 |
はじめに言葉あり | 211 |
見習店員の残業 | 214 |
社員の金を借りる | 217 |
英国の国有産業で | 220 |
強い"円" | 223 |
"風"一本でやれ | 226 |
やればできる | 229 |
最初の給料 | 232 |
日に新た | 235 |