自然界を見てみると、たとえば保護色というものがある。アオムシやイナゴは草色をしているし、カレイやヒラメは砂の色をしている。アマガエルやカメレオンなどは、そのまわりの色に応じて、体の色を変えることができるという。いずれも身を守るために、都合がよくなっているわけだ。そのほかタコやイカは危険と思えば墨を吐いて逃げるし、カメや貝などは固い殻の中に身を隠す。

 

 このように、たとえ形は違っていても、すべての生物はそれぞれに自衛力、自衛手段をもっているのである。これはいいかえれば、自然が万物にそのような自衛力を与えていると考えてもよいであろう。つまりみずからを守るということは、自然の摂理というか、いわば天意にかなうことだと思うのである。

『松下幸之助発言集39』(1966)