心の豊かさというものにはいろいろあるだろうけれど、恩を知るということは、その最たる一つじゃないかと思う。恩を知ると心が豊かになって、人間といわず天地万物いっさいのものの恵みが、みな分かってくる。花ひとつ見ても、今まではただきれいだなという程度だったものが、もっと深い美しさが分かってくる。つまり恩を知るということは無形の富であって、それは無限に広がって大きな価値を生むわけや。

『松下幸之助発言集43』(1974)