ことわざに、「流れる水は腐らない」というのがある。また、「淀む水に芥(あくた)たまる」ともいう。これらの言葉は、何ごとにつけ常に流動、活動しているものには、沈滞とか腐敗といった現象は起きないということを教えたものである。
つまり、われわれの日常生活が、もし十年一日(いちじつ)のごとく同じ状態であるならば、ともすればいろいろの問題が起こってきて好ましくない結果が生じがちである。しかし、そこに絶えず流れてやまない川の水のように、きのうよりはきょう、きょうよりはあすと、刻一刻より新たなものが加わっていくならば、そこからは限りない発展の道もひらけてくる。そういうことをいったものであろう。
『松下幸之助発言集40』(1969)