さかのぼれば、古代においてすでに、仁徳天皇は、国中に炊事のけむりの乏しいのを見て人民の困窮を知り、三年間課役を中止し、三年たって国中にけむりが満ちてはじめて、「民富めり」と再び租税を課しておられる。その間は皇居も荒れはて、雨がもるほどであっても、修理されなかったという。そして、「天が君主を立てるのは人民のためであり、君主は人民を本としなくてはならない。人民が貧しいことは自分も貧しいことであり、人民が富んではじめて自分も富んだといえるのだ」といわれたと伝えられている。

 仁徳天皇の場合は伝説かもしれないが、しかし大事なことは、そのような人民をいつくしむ仁慈の心を持つことが、昔から指導者のあるべき姿だとされてきたことである。

指導者の条件』(1975)