天皇家の祖先というものは、大昔には小集落の長であったと思うのです。それが長い時代をへて、代を重ね、中集落の長から、大集落の長へとなり、最後に日本を統一し、一つの国家としての基をひらいたということではないかと思います。そして、その天皇家の祖先の思想というものは、個々にはいろいろあったでしょうが、概していえば、自分の権力欲のためというよりは、みなの幸せということを中心に考え、いわゆる徳の政治から出発しているのではないかという感じがします。そういうところに、日本の建国の理念というものがあったのではないでしょうか。
『日本と日本人について』(1982)