“玉を抱いて罪あり”ということばもありますが、個人でも、それを生かすことのできない人が、他人から高価なものをもらっても、かえって災いを招き、不幸に陥る場合が多いと思います。国でも同じことで、その国民が主座をしっかりと保って、いろいろのものをとり入れた時に、はじめてそのものも生き、国民の幸せも生まれてきます。そういう主座を失いつつある姿において、日本人が民主主義その他の主義思想をとり入れたところに、今日のような混迷の姿がみられる根本的な原因があるのではないでしょうか。
『日本と日本人について』(1982)