日本人は、神仏やきわめてすぐれた人びとを神社仏閣にまつり機会あるごとにこれに詣でる、あるいは春夏秋冬それぞれにお祭りをするなどという風習をつちかい保ち続けてきました。そういったお祭りは、そこにまつられたすぐれた人びとの衆知なり業績を、あらためて自分の考えの参考にしたり、あるいは教え導きとする一つの機会であると考えることもできましょう。
だから、お祭りはすぐれた先人の衆知と自分の考えを融合し高め、自分を向上させるものだと思います。それだけにお祭りは、私たち日本人にとってきわめて重要な行事の一つであり、またそういうところにこそ、お祭りの本来の意義があるといえます。
そのように、神仏に詣でたり、お祭りを楽しむということによって、みずから心を高め、身の行ないを正すとともに情操をゆたかにしたり、あるいは、きわめてすぐれた人びとの遺徳なり業績をしのび、感謝し、それを自分の範としようとすることがあったわけです。
『人間を考える 第一巻』(1975)