「松下幸之助経営塾」は、経営者を対象にした松下幸之助の経営哲学を学ぶための公開セミナーです。2020年2月に開催された同塾の研修風景の一端をご紹介します。
【塾生通信 日に新た】松下幸之助経営塾 第20期 第1回
理念を実践する意義
二月十四日、十五日、第二十期の第一回が、「志から理念へ~経営の使命~」というテーマで開催されました。
まず開講に先立ち、弊社人材開発企画部長で当塾ファシリテーターの的場正晃が、当塾の目的と各回のテーマを説明しました。そして塾生の自己紹介が行なわれた後、塾長の松下正幸が開講のあいさつ。「この塾は経営のノウハウやテクニックを教える場ではありません。経営者としてどうあるべきか、何のために経営をするのか、といった基本的なことについて、塾での学びを通して考え方を深めていただきたい」と述べ、塾生も気を引き締めた様子でした。
次いで、的場ファシリテーターが、塾生の目標である"志を確立し、伝える"ために持つべき心がけなどの解説をしたのに続き、弊社理念経営研究センター代表で当塾主幹講師の渡邊祐介が、「松下幸之助の生涯と志」というテーマで最初の講義を行ないました。
二日目はまず、塾生による前日の振り返りを受け、パナソニックエクセルスタッフ元社長で当塾アドバイザーの松本潤氏が、経営理念の実践の積み重ねが大事であることを強調しました。次いで、渡邊主幹講師による講義「経営理念の意義と確立」。なぜ理念が重要なのか、その機能は何か、どうしたら浸透できるのか――などについて丁寧に解説しました。
午後からは、かつて松下電器産業(現パナソニック)副社長やWOWOW社長として活躍し、ぴあ社外取締役を務める佐久間曻二氏の特別講話「松下幸之助創業者に学び、WOWOWの再建に生かす」。
前半は、佐久間氏が二十七歳の頃に初めて松下幸之助に会って以来、①経営理念を判断基準にする、②自分の目で確かめる現場主義を徹底する、③客観的に物事を認識する素直な心を持つ、④人を動かすためのコミュニケーション能力を高める、⑤即断できるカンを磨く――などを学んだことについて、具体的な事例を交えて紹介されました。
後半は、佐久間氏が一九九三年に、巨額の累積赤字に苦しむWOWOWの経営再建を託された際、こうした松下の教えをもとに、経営改革のシナリオを「三つの心構え」と「七つの決め手」としてみずから構築し、同社の官僚的体質と闘いながら、三年で黒字化に成功したエピソードが披露されました。
最後は今回学んだことについて、講師陣を交えてのグループ討議。活発な意見交換後、松本アドバイザーが議論を総括し、充実した第一回となりました。
なお、三月~五月に開催予定だった第十九期第四回および第二十期第二回は、新型コロナウイルス感染症対策のため延期に、加えて四月に予定していた当塾修了生の集いである「PHP松下幸之助経営塾同志会」もやむなく中止となりました。
◆『衆知』2020.5-6より