「松下幸之助経営塾」は、幸之助の理念に学ぶ10カ月間の経営セミナーとして、開講以来のべ300名以上の卒塾生を送り出している研修プログラムです。この塾は「どこをめざし、何を学ぶのか」――担当講師より、お話しさせていただきます。
経営者として経営の軸を持っているか
「松下幸之助経営塾」にご興味をお持ちいただき、誠にありがとうございます。第1回の講義を担当します渡邊です。
この松下幸之助経営塾は一人の経営者をヒントに、自らの企業家・経営者としての可能性を数段上に引き上げるという画期的な講座です。そんなことができるのか。いや、そんなことができるのが、経営者・松下幸之助の94年の人生です。
人間とは途方もなく成長できる可能性があること。そして彼が到達し、実践していた経営の原理原則には時代を超えた普遍性があること、それは多くの方々が、松下幸之助の考え方を参考に人生や経営を発展させてきたことからも分かります。
本セミナーが経営の実務やスキルを伝える他のセミナーと一線を画するのは、まさしくその点にあります。多くの方が経営のスキルを求めて経営学やMBAの門戸を叩きます。それは経営を学ぶ当然の行動ではありましょう。
ただ、経営とは絶え間なく押し寄せる現実・現場で考え、判断し、行動する、その繰り返しです。つまり、そこでもっとも問われるのは、実はいかに多くのスキルを学んだかではなく、学んだスキルの選択でもなく、企業家としての志、また志に支えられた理念、理念に基づく行動が貫かれているかどうかなのです。
皆さんは自分の経営の軸というものをお持ちでしょうか。
学問だけで経営を行うのではなく、松下幸之助という実在した最高のケーススタディを学ぶことで、あなた自身の経営をつくり上げていく。松下幸之助経営塾はそういう場所です。
2011年2月から第一期が開講されて以降、卒塾生はすでに300人に迫るまでになりました。
その人生が「生きた経営の教科書」
第1回のテーマは「志から理念へ ~経営の使命~」です。松下幸之助は整った条件から事業を始めたわけではありません。始めながら自分の志が固まっていき、その志から理念が誕生したと言ってよいでしょう。そこを学ぶために、セミナーの初日は、松下幸之助の波瀾の生涯を30分ほどにまとめた映像を視聴するところからスタートします。
皆さんはまず、彼が大きなハンディを背負っていたことに驚かれるでしょう。
ことさら両親に8人きょうだいという大所帯に生まれながら、次々に肉親を亡くし、26歳までに天涯孤独になってしまうことは想像できないことです。
自らもまたきょうだい同様、健康に恵まれず、病を養いながら経営していたことも、不思議に思えるかもしれません。
独立間もない頃は日々の生活に余裕もなく、質屋通いをしていたことも事実です。それでも、成功に価する成果を出せたところが「生きた経営の教科書」とされる由縁です。最初の講義「松下幸之助の生涯と志」は、松下幸之助の稀有の生きざまをレビューする時間です。
そして、二日目は、「経営理念の意義と確立」を学びます。近年、経営理念に対する理解が進み、いかに自社の経営理念を確立させるかについては、多くの原則が問われるようになりました。
けれども、よりむずかしいテーマが、その経営理念の浸透という問題です。経営者が自分で理念をつくることは内面的な作業です。一方で、その理念が社員の支持を得るものなのか、また、社員それぞれの人生観、仕事観にどれほど共鳴されるものなのかは、大きな課題です。
理念経営とは何か、をじっくりと考えるひと時です。
その上で、本講座の大きな目玉でもある特別講義が始まります。経営の第一線で偉大な業績を上げたベテラン経営者が、自身の哲学に基づく経営の実践、理念のあり方を語ります。
熱血の講義と、用意された講演後の質疑応答。
錬達の経営者から自分が学びたいことを直接、質問できる貴重な時間を、生かさない手はありません。
松下幸之助経営塾は、大いなる成長意欲と課題認識を持って参加すれば、たいへん大きな学びが得られます。「経営塾を卒塾してから、うちの社長は変わった」という声は数多く聞こえています。
ともに志を高め合う道場として
最後にもう一つ大切なことをお伝えしておきましょう。
松下幸之助は明治に生まれ、大正に創業し、昭和に大きな成果をあげ、平成に亡くなりました。
没後30年の今、新たな令和という時代に、幸之助の考え方は果たして通用するのかと思う人もいるかもしれません。
しかし、それは杞憂です。
幸之助が昭和という時代で行なったことをそのまま実行するという単純なことではありません。重要なのは、松下幸之助が生み出したスキルや手法が重要なのではなく、何を問題にして、どこに解決の方法を見出したかという物の見方・考え方が大切なのです。
「万物は日に新た」と幸之助は言いました。
昨日までは常識だったことが明日にはもう時代遅れの陳腐なやり方になっている。
そのスピードはますます速くなっています。
日に日にわずかな時代の進化に気づくことができるかどうかが、幸之助の真意です。
そして「自然の理法」とも幸之助は言いました。
事業というものは、本来発展するようにできている。それが発展できないのは、「自身が発展を妨げているような考え方に陥っている」とも述べています。
その意味するところが分かれば、皆さんの経営は確実に変わっていくはずです。
松下幸之助経営塾はとにかく互いに刺激し合い、気づきあう場所といえます。道場と言ってもよいでしょう。
ともに志を高め合いたいという経営者の皆さまのご参加を、心よりお待ちしています。