「松下幸之助経営塾」は、幸之助の理念に学ぶ10カ月間の経営セミナーとして、開講以来のべ250名以上の卒塾生を送り出している研修プログラムです。この塾は「どこをめざし、何を学ぶのか」――担当講師より、お話しさせていただきます。今回のテーマは「わが志を述べる」です。

経営セミナー 松下幸之助経営塾

発表をする意義とは

こんにちは。松下幸之助経営塾の世界へようこそ。今回はとうとう10か月目第6回の内容を案内することになります。担当させていただくのは渡邊です。

最終第6回のテーマは、「志を伝える~私の命知発見~」。その通りの内容で、ここでは講師の通常の講義はなく、特別講話から始まります。担当講師はPHP研究所客員の岩井虔。締めを飾るには最高の講師です。

岩井虔

なぜか。それは岩井講師こそ松下幸之助のそばで28年間も仕え、松下幸之助の活動を支え続けた人物だからです。岩井講師が語るエピソードは幸之助の人となりをよく伝えてくれます。たとえば、幸之助は何をするにもすべてが早かったといいます。食事をするのも早ければ、決裁するのも早い。何より、物事を尋ねられたり、質問を受けたりしたときでも迷いなく即答する。しかも当意即妙でユニークな考え方なのです。

岩井講師はそこに豊かな感受性と、日常のさまざまなことに学び、そしてそのそれぞれに対して何がこの事象の本質なのか、今後どうなるのか、本来どうすればよいのかといったことを自問自答し、そこで気づいたことを頭の中のボックスにストックしている、幸之助の努力の姿勢を感じるというのです。

また岩井講師がみずから体験した上司としての幸之助の姿も魅力的です。叱るときの厳しい佇まい、その一方で、さまざまなことを質問してくる柔和な視線。幸之助は命令調ではなく、いつも相談調で会話を始めるそうです。「仕事どうや?」「きみ、元気か?」、こうした日々を岩井講師は「一日が質問によって始まり、質問によって暮れる」と述懐しています。それはいかに素敵な時間だったのかが偲ばれます。

こうした岩井講師だからこそ知り得る松下幸之助の人となりを知るのは、塾生たちにとっても至福のひと時といってよいでしょう。

真剣勝負の「志の発表」

最終回のクライマックスは、塾生の方々による「志の発表」です。
この経営塾で学ばれたことをこの「志の発表」という形で成果発表していただくのには、大きな理由があります。
 

最も明快な理由は、事業というものは一人の力で発展させることはできないということです。
「事業は人なり」ではありませんが、自分たちが事業を通じて、社会における重要な責任を果たしていこうとするには、その思いに共鳴してくれる人の協力が不可欠です。
 

そのためには、事業の責任者である塾生の方たちが、それぞれ自分なりの事業観というものを確立し、社員をして広く共鳴させることができるか。そこを卒塾時に問いたいのです。
 

松下幸之助も一皮むけた瞬間がありました。
彼の志の確立は「産業人の使命」を発見したときだといえるでしょう。

松下幸之助

その日、1932(昭和5)年5月5日、松下幸之助が大阪の中央電気倶楽部に全店員を集めたとき、集められた店員たちは、いったいきょうは何が始まるのか予想もつかず、壇上に立った幸之助の話を聞き始めました。
 

幸之助は静かに口を開きました。
創業以来ここに15年、当初1名の従業員から今店員100余名、工員1000余名まで業容が成長したことを喜び店員に感謝の思いを伝えます。
そしてそこから、ギアが入るのです。
 

「自分は思うところあって、会社の将来を考えた。そして、ある体験をしたことから、“自分たちには持たねばならぬ大使命がある”……」
 

そんな幸之助の言葉は、いつしか店員たちの心をとらえていたのです。
 

最初は水を打ったように静まりかえって聴いていた店員全員が、幸之助の思いを理解し、その高い志に感動するだけでなく、次々に壇上に駆け上がって武者震いをしたり、自分の思いを声高らかに叫んだりしました。
その光景に幸之助自身も驚いたといいます。
 

けっして雄弁家でもない幸之助がそのように社員の士気を高めることができたのは、なぜだったのでしょう。
だれがきいてもうなずける筋が通った話、そして産業人であれば、仕事を通して社会に対してどのような責任をもつべきなのか。
 

人心を昂ぶらせるのがよいというわけでもありません。
静かな気づきであっても、自分たちの事業の意義や仕事の未来がはっきりとすれば、絶対に前向きになれる。強い組織が生まれるのです。
志というものは、ただの野望や夢想でもなく、経営者が持つべき確固たるもの。
塾生にこうした発表を求めるのは、その一点、志を高めることなのです。

同志会へ

塾生全員の発表が終わると、10カ月の学びがそれぞれ塾生の胸に去来するのでしょう。当塾の塾長・松下正幸が最後の講義のために登場します。孫だけが語りうる松下幸之助の人となりが明かされます。

そして、塾生の皆さんが最後の感想を述べてくださる時こそ、私どもスタッフにとっても感動のひと時です。10か月のあいだに塾生同士が互いに研鑽し、情報を共有し、コミュニケーションをとるなかで、自然に“志を同じくする”同志になっていることが、よく分かります。経営塾はこうして感動的なフィナーレを迎えるのです。

経営塾同志会

松下幸之助経営塾の魅力として、最後に挙げておくのは、同志会の存在です。改めて申し上げますが、経営塾にはすでに300名に迫るOB、同志のネットワークがあります。半年に1回、ふたたび学びをする場が同志会です。

志を見失わないために、また同志がいかに志を高め、さらなるステージにいるのを確認するために、同志会は志を磨き合う場として、卒塾後の皆さんにも刺激を与え続けます。6回の研修と同志会の場が松下幸之助経営塾のすべてです。それはあなたの経営者人生に大きなプラスを与え続ける場になるに違いありません。

1つ上のレベルを目指す経営者の皆さん、皆さんのご参加を心よりお待ちしています。
 

松下幸之助経営塾第6講座「志を伝える~私の命知発見~」

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最終回となる第6回は、これまでの10ヵ月間の学びの総決算です。さまざまな講義・体験を基にしてみずからの志をまとめ、自社のビジョンを作成・発表していただきます。あわせて、弊社から松下幸之助経営塾「修了証」を授与し、松下幸之助揮毫「立志」の額(複製)を贈呈いたします。

経営セミナー 松下幸之助経営塾

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