PHP研究所が最初に世に送り出した商品は「PHP叢書」でした。発行は、研究所が創設された昭和21(1946)年11月3日から約3カ月後の昭和22(1947)年2月1日です。

 

 1冊目のタイトルは『智情意の調和とPHP』で、主に教育における智、情、意の調和を訴える内容でした。冒頭には、「こゝに智情意の調和といふことを取り上げたのはこれがPHP(Peace and Happiness through Prosperity―繁栄によって平和と幸福を)実現の為の基礎となると思ふからである」と記されています。

 

PHP叢書

 定価は2円50銭(現在の価値で約120円)、A6判12頁。当時は敗戦により、最大の木材供給源であった南樺太を失ったため、深刻な紙不足に陥っていました。

 

 約1カ月後に納品された「PHP叢書」の2冊目は『喰べる算段(PHP問答)』です(左写真)。「繁男」と「栄子」が「問答」する形式で書かれており、「繁男」は「誰が悪い、かれが悪いと責任を問い合ったり、なけなしの物の配分の仕方で争ったりしている内は、いつまでたっても立ち直りは出来ない」と述べています。『智情意の調和とPHP』は論文調の書き方でしたが、『喰べる算段(PHP問答)』は口語調で分かりやすい文章でした。

 

 『喰べる算段(PHP問答)』はA6判8頁で、値段は一度2円50銭と印刷されたのち、消された形跡があります。詳細は不明ですが、終戦後の猛烈なインフレにより、価格を変更せざるをえなくなったと推測されます。


 これら2冊の刊行の後、同年4月、月刊誌『PHP』が創刊されました。