松下幸之助は昭和49(1974)年12月に『崩れゆく日本をどう救うか』を発刊しました。記録が残る限り、発案から3カ月程度で発刊しており、オイルショックという時事的な話題に合わせたようです。

 昭和49(1974)年9月27日、PHP研究所で行なわれた研究会で、この書について話しあわれています。当初つけられた仮の題名は『沈没寸前の日本』であり、研究員は「それではその次に『沈没』でございますね。『沈没』をいよいよ、お時間まで(検討しましょう)」と述べています(速記録№4935)。これが『難局日本をどう救うか』と改題され、さらに『崩れゆく日本をどう救うか』に変わりました。


 昭和49(1974)年12月18日に第1版30,000部が発刊されました。しかし同じ日に真々庵で開かれた研究会では、原稿の改訂作業が行なわれています(録音№4939)。昭和50(1975)年1月10日に第2版21,000部が発刊となっており、同月31日には第2版第2刷29,000部が増刷されました。男性所員で「キャラバン隊」が組織され、販売のために約300社を訪問しています。


 時機を得て各界の大きな反響を呼び、昭和50(1975)年の1年間で16刷65万部が出荷され、全国地方の有力書店からなる書店新風会より、昭和50年度の「新風賞」を受賞しました。この賞は「売れ行きが良くて、しかも文化的・社会的意義を認めた出版に対して贈る賞」とされ、著者である幸之助と出版元のPHP研究所が受賞対象となっています。