Q87:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?
松下電器の工場の一画に道場が建設された時、その神棚があまりに派手だったので、幸之助は即刻取り換えるよう指示しました。後日、その責任者を改めて呼び出した幸之助は、なんと言ったでしょうか?
(1)「授業料を出してくれ」
(2)「武道を一から修得しなさい」
(3)「よく取り換えてくれた」
解答&解説コラム
(1)が正解です。
昭和8(1933)年、松下電器が門真に移転し、来賓を招いて3日間にわたり工場群が披露されることになりました。敷地の一画には柔道と剣道の道場として「尚武館」が併設され、26歳の工場長が館長に任命されていました。
前日の夕方、案内コースを下見した幸之助は、「尚武館」の神棚に豪華な祠が置かれているのを目にして、「なんちゅうもんを置いとる! 武道というのは簡素なもんや。すぐに替え!」と命じます。青年館長が四方八方駆け回り、夜の11時過ぎにやっと小さな祠を売っている店を見つけ、無理を言って手に入れた時には、すでに終電が出た後。館長はやむなく門真までの十数キロを歩いて帰り、祠を取り換えたのです。
3日間の披露が無事に終わった翌日、幸之助は館長を呼ぶと、その鼻先に手を差し出して言いました。「授業料をのせてんか。きみはぼくに授業料を出さなあかん。経営のコツを悟ればその価値百万両や」。経営のコツの一端を身をもって教え込まれたことに気づいた館長は、涙が出るほど感激し、返す言葉もなく立ち尽くしたと述べています。